9日午前、東京都の聖火リレーのスタート地点となる予定だった「駒沢オリンピック公園」で、雨の中、聖火のお披露目式が(観客を入れず)関係者のみで行われました。
松岡修造氏をはじめ来賓者たちと小池都知事はテントの中で雨をしのぎましたが、手話通訳者(と司会者)が雨に濡れながら仕事をしていたことに、取材カメラマンからも「屋根の下に入れてあげたらいいのに…」との声が上がりました。
しかし小池都知事を筆頭に、区議会議員ら政治家たちは何の違和感も持たなかったようで、ネットでは〈「おもてなし」どころか「おもいやり」のカケラもない〉、〈誰1人として傘を持って横に立つ人が居ないとは〉、〈手話通訳者に傘をさしてあげるとか屋根のあるところでやってもらうとかの配慮ができない理由が全然分からない〉などの声が上がりました。
LITERAは、「権力者や利権関係者たちだけが守られ、手話通訳という役割の人がないがしろにされていたこの風景は、東京五輪の本質を表すもの」と述べました。
そして大会組織委がボランティアやバス運転者などの大会関係者へのワクチン接種について何の配慮もせずに、ようやくボランティアに対し6月30日~7月3日の間に東京で接種を行うと決めたのが、もう開会に間に合わなかったのはそのよい例だとしています。
いずれにしても雨にずぶ濡れの手話通訳者のことを都の関係者が誰も気にしていなかったというこのニュースは、東京五輪の本質を象徴しています。
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聖火お披露目式で五輪の本質表す光景…小池百合子、松岡修造ら来賓はテントで雨をしのいでるのに「手話通訳」は外で濡れながら進行
LITERA 2021.07.12
緊急事態宣言下での五輪開催という常軌を逸した日本政府や東京五輪組織委員会、IOC(国際オリンピック委員会)の決定に対し、「いったい誰のための東京五輪なのか」という疑問があがりつづけている。「平和の祭典」を謳いながら、その実態は国民の命と安全を軽視したものにほかならないからだ。
そんななか、そうした東京五輪の本質を表す、あるネット記事が話題を集めている。
それは、「ニュースサイトしらべぇ」が10日に配信した「五輪関連イベント、雨の中「手話通訳」続ける女性に報道陣からも心配の声」という記事。9日に聖火が大会開催都市である東京に到着し、駒沢オリンピック公園総合運動場で「聖火お披露目式」が開催されたが、このとき会場では雨が降っていたにもかかわらず、来賓はテント内に収まる一方、中継用の手話通訳を担当した女性は風雨にさらされ、取材カメラマンからも〈「屋根の下に入れてあげたらいいのに…」「“平和の式典”ってなんなんだろう(笑)」という声まで上がる始末だった〉と伝えたのだ。
そこで、この「聖火お披露目式」の様子を東京都オリパラ準備局のYouTubeチャンネルの動画で確認してみたが、記事は事実だった。同式典は小池百合子・東京都知事や松岡修造氏、パラリンピックメダリストで聖火リレー公式アンバサダーの田口亜希氏、関係者らが参加し、約40分にわたって聖火の受け渡しや記念撮影がおこなわれたが、運動場に組まれたステージの上には小さなテントがひとつ。来賓者らは登壇するとテント内に入ったが、一方で司会と手話通訳の女性はステージ上のテントの外に立ち、雨合羽も傘もないまま、雨に濡れながら進行と手話をつづけたのだ。
来賓はテント下で雨風をしのぎ、司会者と手話通訳の女性は服を濡らし、傘を傾けられることもなく黙々と進行をつづける……。この式典を実施したのは東京都だが、司会者と手話通訳者が雨に打たれつづける場に居合わせた小池都知事を筆頭に、区議会議員ら政治家たちは、その光景に疑問を持たなかったのか。
しかも、この目に余る「不公平」を伝えたのは同記事だけで、新聞でもテレビでも報じられていなかった。そのため、ネット上では記事が拡散され、こんな意見が飛び交ったのだ。
〈「おもてなし」どころか「おもいやり」のカケラもない〉
〈事前イベントでさえこの通り。大会が始まったとしたらボランティアや現場担当の人々はどんな扱いを受けるのだろう〉
〈もうこれ障害者差別の地繋がりじゃん…酷すぎて愕然とした〉
〈誰1人として傘を持って横に立つ人が居ないとは〉
〈オイラやっぱりあの場であの手話通訳の方に傘を差し掛けられるような人間がたくさんいる社会に住みたいしそういう人間になりたいよ〉
〈手話通訳者に傘をさしてあげるとか屋根のあるところでやってもらうとかの配慮ができない理由が全然分からない〉
あまりにも当然すぎる意見といっていいだろう。しかも、この一件はけっしてこれだけの問題ではない。なぜなら、権力者や利権関係者たちだけが守られ、手話通訳という役割の人がないがしろにされていたこの風景は、東京五輪の本質を表すものだからだ。
「利権関係者以外は捨て駒」という事態は、東京五輪のあらゆる場所で起きている
実際、「利権関係者以外は捨て駒」という事態はあちこちで起きている。たとえば、日本政府は五輪開催までにボランティアへのワクチン接種を完了させるとし、組織委もボランティア7万人の接種を希望する人すべてに対するワクチン確保のめどが立ったと発表したが、ところがワクチン2回目の接種期間は7月31日から8月11日とされ、五輪の開催期間中には間に合わないことが露呈。すると、丸川珠代・五輪担当相は「1回目の接種でまず1次的な免疫をつけてもらう」などと言い出した。1回接種では十分な効果が得られないというのは政府も認め、必ず2回接種を受けるよう求めているというのに、よりにもよって閣僚が非科学的な主張を繰り広げたのである。
しかも、政府は6日になって、選手らを送迎するバスの運転手などへのワクチン接種が東京五輪開催までには「とても間に合わない」と、自民党の外交部会で説明。11日には聖火リレーでランナーやスタッフを乗せた送迎バスの運転手の感染が確認されたと公表されたばかりだが、大会期間中には全国から6万台ものバスが集まるという。つまり、ここでまたも「バブル方式」が崩れることが判明したと同時に、政府は五輪スタッフが危険に晒されることを事実上、容認したのである。
かたや、しっかりワクチン接種を完了させて来日したIOCのトーマス・バッハ会長は、「五輪の特例措置」によって原則14日間の隔離期間が免除され、わずか3日間に短縮。しかも滞在先は5つ星ホテルの「The Okura Tokyo」で、1泊数百万円のVIPルームではないかとも噂されている。この特別厚遇には、忖度なしの真っ当すぎる発言をおこなってきた山口香・前JOC理事が「普段は貴族でも、五輪の時だけはビジネスホテルに宿泊して庶民の気持ちを知る。悪くないですよね。日本には温泉付きのビジネスホテルもありますので!」と提言、ネット上では「バッハ会長もアパホテルで14日間隔離すべき!」という声があがった。
ぼったくり男爵ら五輪貴族たちは厳戒態勢のなかで特例扱いを受け、一方で「バブル方式で安全安心」という説明が大嘘であることが露呈しながら、ワクチン接種も完了しないままボランティアやバスの運転手たちは危険に晒そうとする。いや、それどころか国民には緊急事態宣言の発出によって我慢を強い、大会開催が感染拡大に拍車をかけるという懸念さえ無視されつづけている。人命を蔑ろにするあからさまなこの「不公平」こそ、東京五輪の本質なのだ。
そう考えれば、司会者や手話通訳の女性が雨に濡れるなか傘のひとつも差し出されないという状況も、五輪主催者側にとっては「異常」でも何でもない「平常運転」なのだろう。まさに欺瞞だらけの「平和の祭典」と言わざるを得ない。(編集部)