2021年7月31日土曜日

危機感を共有できていない責任は首相にある 根本から姿勢正せ

 共産党の志位委員長は29日、記者会見し、「東京では医療逼迫が現実のものとなり、医療崩壊の危険が差し迫ったものになっている」と強調しました。そして厚労省アドバイザリーボード「危機感を行政と市民が共有できていないのが、現在の最大の問題」と述べたことについて、その責任はあげて首相にある」として (1)五輪開催を強行し、国民に間違ったメッセージを送り続けている (2)首相が説明責任を果たさず、根拠のない楽観論をふりまいている と批判し、「いまからでもオリンピックは中止し、命を守ることに全ての力を集中すべきだ」と主張しました。

 そのうえで、「この局面で一国の首相に一番求められているのは、コロナのリスクに関する情報を行政、専門家、市民などで意思疎通し合って合意形成をすること」なのに、絶望的なまでにそのリスクコミュニケーションの意思がない批判しました。
 そして「“ワクチンの接種が順調にいっているから大丈夫だ”という楽観論は許されない」と述べました(しんぶん赤旗)
 時事通信は、コロナ感染が急拡大するなか菅首相の危機感が見えにくいとして、首相は五輪開幕後、日本勢が金メダルを獲得するたびにツイッターを更新しているが、感染対策の呼び掛けは21以降一度もないと指摘しましたそして「人流も減っている」と発言したことに対してはある専門家が「どのデータか示してほしい」と述べたことや、立民の枝野代表が「首相から真摯なメッセージが発信されない限り効果が出ないのは当然」と指摘したこと、また共産党の田村智子氏参院内閣委で「首相に危機感を感じない」と酷評したことを紹介しました
 しんぶん赤旗(2本)と時事通信の記事を紹介します。
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危機感を共有できていない責任は首相にある 根本から姿勢正せ
                        しんぶん赤旗 2021年7月30日
志位委員長が記者会見
 日本共産党の志位和夫委員長は29日、国会内で記者会見し、「東京を中心とした首都圏で、新型コロナの感染急拡大が止まらず、全国に感染拡大が広がる極めて深刻な事態に陥っている」「東京では医療逼迫(ひっぱく)が現実のものとなり、医療崩壊の危険が差し迫ったものになっている」と強調しました。志位氏は「危機感を行政と市民が共有できていないのが、現在の最大の問題」との厚生労働省アドバイザリーボードの評価を引いて、「危機感を共有できていないのはなぜか。あげて責任は首相にある」とのべ、(1)五輪開催を強行し、国民に間違ったメッセージを送り続けている (2)首相が説明責任を果たさず、根拠のない楽観論をふりまいていると厳しく批判。こうした姿勢を根本からたださなければ、打開の道は開けないと訴えました。
 志位氏は、政府分科会の尾身茂会長が28日の衆院内閣委員会で、東京では六つの指標――入院者数、重症者数、高濃度酸素による治療者数、入院調整者数、宿泊療養者数、自宅療養者数の全てで増加しているとして、「医療の逼迫がすでに起き始めている」との判断を示したことに言及。また同日、厚労省のアドバイザリーボードが出した資料でも、「このままの状況が続けば、通常であれば助かる命も助からない状況になることも強く懸念される」との評価を出したことを指摘。また評価資料では、東京都では夜間滞留人口が前回の緊急事態宣言時よりも「緩やかな減少」にとどまり、千葉県では増加、埼玉・神奈川両県では大きな減少がみられず、「東京を中心に当面は感染拡大の継続が見込まれる」という重大な結論を出したと強調しました。
 また、同評価が、「危機感を行政と市民が共有できていないのが、現在の最大の問題」としていると指摘。「なぜか。私はあげて菅政権、政府の責任だと強く言いたい」と述べ、次の二つの問題を明らかにしました。

 第一は、「五輪開催を強行し、国民に誤ったメッセージを出し続けている」ことです。志位氏は、「菅政権は、オリンピックの開催中止の検討さえせず、“もう始まったことだから”と、あくまでもこの“祭り”を続けるという姿勢だ。ここをあらためずに国民に自粛を要請しても説得力はない」と指摘。「政権が国民に誤ったメッセージを流し続けていることが、『危機感の共有』ができない最大の原因になっている」と強調。「いまからでも、オリンピックは中止し、命を守ることに全ての力を集中すべきだ」と主張しました。
 第二は、菅義偉首相が国民への説明責任を果たさず、根拠のない楽観論を振りまいていることです。志位氏は、28日に新規感染者が東京で3000人を超え、全国で9500人を超えた状況のもとで記者会見を求められた菅首相が、「本日、お答えする内容がない」と言い放ったとして、「あぜんとする。許しがたい無責任な姿勢だ」と批判しました。

 そのうえで、「この局面で一国の首相に一番求められているのは、リスクコミュニケーションリスクに関する情報を行政、専門家、市民などで意思疎通し合意形成をすることを真剣にやることだ」と指摘。「それは意思さえあればできるはずだ。このままいけば感染が広がる一方だという事実をきちんと伝え、“政府も責任を果たすから、国民のみなさんにも協力をお願いします”と言うことが首相の務めではないか。絶望的なまでにリスクコミュニケーションの意思がない。ここに一番の問題がある」と批判しました。
 志位氏は、野党共同の要求として、議院運営委員会などでの閉会中審査に菅首相自身が出席し、「現状の認識と打開の方策について責任をもって説明することを強く求めたい」と述べました。
 志位氏は、五輪開催による感染拡大への懸念について雑誌のインタビューで問われた菅首相が、「ワクチン接種者数が極めて順調に増えているから、その懸念は当たらない」と述べたことへの見解を問われ、「ワクチンの接種のいまの到達点は人口比で1回目が38%、2回目はまだ27%だ。急ぐことはもちろん重要だが、どんなに急いでも、今のデルタ株による『第5波』には間に合わない。この現実を直視すべきだ。ワクチン接種と大規模なPCR検査をセットで行い封じ込めをはかる、自粛要請とセットで十分な補償を行う、疲弊する医療機関に対する減収補てんや医療従事者への支援を行う、そしてオリンピックは中止し、コロナ対策に集中する。こうしてこそ国民と危機感を共有できる体制をつくることができる。“ワクチンの接種が順調にいっているから大丈夫だ”という楽観論は許されない」と述べました。
 また、「共産党は一貫して五輪開催でコロナ陽性者が増えると警鐘乱打してきたが、実際に感染拡大したことへの受け止めは」と問われた志位氏は、「大変残念だ。私たちが1月から主張してきた五輪中止という提唱に早い段階で真剣に耳を傾けてほしかった」と指摘するとともに、「いまからでもオリンピックは中止し、命を守るためにあらゆる力を注ぐべきだ」と重ねて主張しました。


感染急増、見えぬ菅首相の危機感 専門家が警鐘、溝拡大―新型コロナ
                         時事通信 2021年07月30日
 新型コロナウイルス感染が急拡大する中、菅義偉首相の危機感が見えにくくなっている。抑止に向けたメッセージ発信が乏しいためで、「説明と説得が全く足りない」(立憲民主党の枝野幸男代表)との声が上がる。医療崩壊を危惧する専門家との溝は広がっており、苦言も相次いでいる。
 「橋本大輝選手、体操個人総合で日本勢3大会連続となる金メダルおめでとうございます!」。首相は29日、自らのツイッターにこう書き込んだ。五輪開幕後、日本勢が金メダルを獲得するたびにツイッターを更新しているが、感染対策の呼び掛けは21日に投稿して以降、一度もない。
 28日に全国の新規感染者が過去最多を更新しても首相は内閣記者会の取材要請を拒否。その理由を要請に応じた29日に記者団から詰められると、「(緊急事態宣言などの)一定の方向性を示す中で対応している」と述べるにとどまった。
 29日は記者団に対し「危機感」を口にしたものの、むしろワクチン接種で重症化リスクの高い高齢者の割合は減っていると強調する場面もあった。首相にはいたずらに不安をあおりたくないとの思いがあるとみられるが、首相周辺は「感染減少の対策は何でもやる」と焦りを隠さない。
 専門家は危機感を募らせている。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は29日の参院内閣委員会で「今の最大の危機は社会一般の中で危機感が共有されてないことだ」と警鐘を鳴らした上で、政府に強いメッセージの発信を求めた。
 ある専門家は、首相の「人流も減っている」との発言に関し、「人流が減っているから大丈夫だと言うが、どのデータか示してほしい」と不満を示した。ワクチン効果を訴える姿勢については「接種していない重症者の発生は続く。首相も危機意識を持ってほしい」と訴えた。
 別の専門家は「東京の医療が崩壊するような状況で選手がメダルを取っても心から喜べない」と語り、感染対策の徹底を求めた。
 野党は批判を強めている。立民の枝野氏は記者会見で「首相から真摯(しんし)なメッセージが発信されない限り、(対策の)効果が出ないのは当然だ」と指摘。共産党の田村智子氏は参院内閣委で「首相に危機感を感じない」と酷評した。


命守る責任投げ出し 田村智子議員 五輪中止 政府に迫る
                       しんぶん赤旗 2021年7月30日
参院内閣委
 日本共産党の田村智子議員は29日の参院内閣委員会で、新型コロナの感染者が急増しているにもかかわらず、菅義偉首相が危機感を共有していないことを厳しく批判し、「政府の対策本部で五輪中止を含めた議論を行い、菅首相出席のもと国会できちんと質疑を行うべきだ」と迫りました。
 田村氏は、五輪の開会式に合わせ、航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」のテスト飛行・展示飛行を強行し、長時間の密集・密接状態をつくったことをあげ、政府は人流を抑えるつもりがあるのかと追及。さらに、東京で救急搬送困難事例が既に増加しているにもかかわらず、菅首相は27日の記者会見で医療逼迫(ひっぱく)に一言も触れず、人流は減っているなど楽観的な言葉を並べ、またも誤ったメッセージを発信していると菅首相の姿勢を批判。「新規感染者を懸命に抑える努力が今すぐ必要だと危機感をもって発信する最も有効なメッセージは、五輪中止を表明することだ」と強調しました。
 しかし、西村康稔経済再生担当相は「不要不急の外出自粛、自宅でテレビ観戦してもらうなど、さまざまな呼びかけを行い、危機感を共有していきたい」と、まともに答えませんでした。
 田村氏は、五輪の開催によって、アスリートやボランティアらの感染リスクが高まり、コロナ感染実態を伝えるニュース報道は十分流されなくなっているとして、「いったい新規感染者がどういう規模に達したら五輪中止を議論するつもりなのか」と迫りましたが、西村担当相は答弁する意思さえ示しませんでした。田村氏は「命を守ることへの責任を投げ出している」と厳しく批判しました。