国立感染症研究所は、海外から東京五輪・パラリンピックに参加する選手団・関係者・メディアなどの新型コロナ感染対策について、入国後14日間を外部と遮断するだけでなく、15日目以降も市民との接触を避けるよう求めるとともに、バブル離脱後も「その時点から最低14日間は一般人との接触を回避する厳格な管理体制が望まれる」と強調する評価書を公表しました。
大会組織委員会などが作成したプレーブック(規則集)には、入国15日目以降の規定はありません(当然「離脱後」の規定もありません)。
東京新聞が、感染研が評価書を先月23日付でホームページに公表したことを報じました。
大会組織委のプレーブック(規則集)が、こうした権威のある公的機関によるより厳しい評価を反映すべきであるのはいうまでもありません。
政府の対応も不明朗で、長妻昭元厚労相は記者団に「政府に対策を求めても『組織委にお願いする』と言うだけ。日本の感染対策の根幹にかかわることなのに、おかしな話だ」と話しています。
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<新型コロナ>バブル離脱後も最低14日間は一般人と接触回避を 感染研、五輪組織委規定より厳しく
東京新聞 2021年7月11日
国立感染症研究所は、海外から東京五輪・パラリンピックに参加する選手団やメディアなどの大会関係者の新型コロナウイルス感染対策について、入国後14日間を外部と遮断するだけでなく、15日目以降も市民との接触を避けるよう求める評価書を公表した。大会組織委員会などが作成したプレーブック(規則集)には、15日目以降の規定はなく、一般市民同様の行動を認めるが、感染研の評価書はより厳しい内容だ。
評価書は感染研が先月23日付でホームページに公表した「東京五輪・パラリンピック開催に向けての感染症リスク評価」。海外関係者の入国後14日間の活動は「基本的に組織委が管轄、提携する特定区域での活動に限られる」と、外部との接触を遮断する「バブル方式」を採用したプレーブックに沿う内容だ。
プレーブックは、選手には競技が終われば速やかに選手村を離れるよう求めているが、その他の関係者に関するバブル離脱後の記載はなく、最終日の検査で陰性なら一般市民と同様の移動や飲食が可能になる。評価書は「離脱後は、その時点から最低14日間は一般人との接触を回避する厳格な管理体制が望まれる」と強調。行動範囲が広がった関係者が国内の大会ボランティアらと接触する可能性があり、対策を講じなければ市中感染につながるとの懸念を示した。
首都圏一都三県などでの無観客開催が決まる前の試算では、ボランティアら国内関係者は約19万人だ。
厚生労働省結核感染症課は評価書に関し「感染研と厚労省、内閣官房の三者で調整し、必要な内容だと考えている」と説明。バブル後の海外関係者の管理体制については「14日を超えて日本に滞在する関係者はほぼおらず、管理の発動はレアケースという認識だ」と話すが、内閣官房の担当者は「メディアの場合、既に入国している人もいるだろうし、必ずしも14日以内で帰国することはないのではないか」と指摘した。
評価書は、自治体向けの感染対策の手順書の位置付けで、コロナ禍を受けて大会延期前の2017年版を更新。厚労省は都道府県と政令市に通知したが、強制力はない。(柚木まり)
説得力乏しい「安全安心の五輪」 水際対策・バブルを巡る首相発言を点検した
東京新聞 2021年7月10日
菅義偉首相は8日の記者会見で、東京五輪・パラリンピックを巡り、選手や関係者のワクチン接種や行動管理、水際対策などにより「安全安心の大会を成功させる」と表明した。だが、野党や専門家からは実効性に懸念が投げかけられている。会見での首相の発言を点検すると、説得力に乏しい実態が見えてくる。
◆「選手や大会関係者の多くはワクチン接種済み」
首相は会見で「選手や大会関係者の多くはワクチン接種を済ませている」と指摘。行動は指定されたホテルと事前に提出された外出先に限られるとして「一般国民と接触できないように管理される」と話した。
国際オリンピック委員会(IOC)によると、選手らのワクチン接種率は80%を超える見通し。しかし、五輪で約19万人、パラリンピックで約11万人いる国内の関係者の接種率は不明。選手の近くで働く人もいるが、公共交通機関の利用は通常通り認められる。
組織委員会は現在、関係者へのワクチン接種を進めているが、選手を輸送する運転手やボランティアへの2回目の接種は8月までかかる見通し。厚生労働省は2回目の接種から十分な免疫ができるまでに、米ファイザー製は7日、米モデルナ製は14日程度かかると周知しており、ワクチンの効果が大会関係者に行き届くとは言えない状況だ。
◆「一般国民と接触しないように管理」
首相の言う「行動管理」の効果も不透明だ。組織委は選手以外の関係者に対し入国後14日以内でも宿泊施設などで食事ができなかった場合、コンビニや飲食店の個室の利用を特例で認める。関係者の行動監視を担う組織委は、監視員の数や配置場所など基本的な体制も明らかにしていない。
水際対策を巡っては、空港でも、トイレや手荷物引き渡し所、カフェなどで、一般客と動線が明確に分かれていないことが野党の視察で判明した。
立憲民主党は9日、水際対策や行動管理の厳格化を内閣官房などに要望。長妻昭元厚労相は記者団に「政府に対策を求めても『組織委にお願いする』と言うだけ。日本の感染対策の根幹にかかわることなのに、おかしな話だ」と話した。(大野暢子)