官邸ポリスのいわばツートップであった北村滋・国家安全保障局長と杉田和博・官房副長官が近く退任します。両氏とも安倍前首相に近いことから、菅氏は全幅の信頼を置かずにただ和泉洋人補佐官だけを信頼しているということは以前から言われていました(本来であれば例のコネクティングルーム問題で公的な立場から消え去るべき人物を、こんな風に無定見に重用するのは異常なことです)。
後任には菅氏に「より近い人たち」が就き、財務事務次官も菅氏の息のかかった主計局長が就くということです。日刊ゲンダイが短い記事で報じました。
警察と財務省を握り長期政権を期すというわけで驚きですが、そもそも首相は自分の判断に自信を持っていて、他の議員の提案を受け入れることはほとんどないのだそうです。
それなら当面のコロナ再拡大にどう対処するのか、このままではコロナ再拡大の最中に開かれることになる五輪をどうするのかについて、納得できる方向性が示されているのかといえば何もありません。一体どこに自信を持っているというのか ・・・ 本当に不思議な話です。
いまは長期政権の構想ではなく、当面の課題に明確な方針を示してほしいものです。
日刊ゲンダイの記事「感染再拡大、国民は皆知っていたこと 思考停止 バカ丸出し政権と国民の悲劇」を併せて紹介します。
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菅首相お得意の「強権人事」で官邸から“安倍派”を一掃 長期独裁の足場固め
日刊ゲンダイ2021/07/02
長期独裁を狙う菅首相が、官邸内に残る“安倍派”を一掃し始めた。
「官邸のアイヒマン」と呼ばれた国家安全保障局の北村滋局長が近く退任し、菅首相の信頼が厚い秋葉剛男前外務次官が後任に就くと報じられたばかりだが、衆院選後には「官邸の守護神」こと杉田和博官房副長官も交代させる方針だという。
2012年の第2次安倍政権発足以来、9年間にわたって官房副長官を務めてきた杉田氏は、17年から内閣人事局長も兼任し、官僚の頂点に君臨してきた。今月25日に在職3134日となり、村山内閣から小泉内閣まで副長官を務めた古川貞二郎氏の歴代最長記録を抜く。この春で80歳を迎えた高齢で心臓の持病もあるため、東京五輪を花道に退任させるというのが表向きの理由だ。
■予算と警察を掌握
「北村さんも杉田さんも、安倍前総理に近いから嫌なんですよ。彼らを通じて官邸内の情報が安倍さんに筒抜けになっているのではないかと菅総理は不信感を持っていて、自分だけに忠実な腹心で周囲を固めたい。昨年の国会で、菅総理が日本学術会議の任命問題の黒幕は『杉田さんです』と責任を押し付けるような答弁をして以来、杉田副長官も総理を支える気持ちを失っているようでギクシャクしていました」(官邸事情通)
後任には“天領”の総務省から次官経験者を引っ張ってくる意向だという。菅首相に近い岡崎浩巳元次官や安田充元次官が有力視されている。
安倍派の放逐は首相秘書官人事にも及ぶ。7人いる秘書官で唯一、安倍政権からの続投だった防衛省出身の増田和夫秘書官を交代させる人事を1日付で発令。さらに秘書官を8人体制に増員して、自身の事務所秘書で昨年末まで政務の首相秘書官を務めていた新田章文氏を再び官邸に呼び戻す。
「官房長官時代に秘書官だった財務省の矢野康治主計局長を事務次官にする人事も決めた。一橋大卒の財務次官は戦後初めて。五輪後には、同じく秘書官だった警察庁の中村格次長を長官に引き上げる予定です。菅総理が最も信頼する官僚がこの2人で、予算と警察を握れば政権は安泰と考えているはずです」(霞が関関係者)
人事による権力強化は菅首相の常套手段だが、周囲をイエスマンで固めれば、都合の悪い情報は入らず、国民の声はますます届かなくなる。
感染再拡大、国民は皆知っていたこと 思考停止 バカ丸出し政権と国民の悲劇
日刊ゲンダイ 2021年7月2日
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
「まん延防止等重点措置の延長を政府が検討」「東京五輪の無観客開催に現実味」
1日、新聞テレビが一斉にこう報じたが、「何を今さら」「バッカじゃないのか」と呆れている国民が少なくないだろう。
6月30日に開かれた厚労省のアドバイザリーボードでは、最も深刻な「ステージ4」に迫る東京都のリバウンド状況やインド株(デルタ株)への置き換わりが加速していることなどが報告され、メンバーの専門家は「これで解除したらおかしい」と断言した。
ところが、「第5波来襲」という現実に、官邸が慌てふためいているとの報道。政権幹部はいら立ち、閣僚経験者は「無観客だと『コロナに打ち勝った証し』にならない」と頭を抱えているという。
1カ月後に東京五輪開幕という日程優先で、6月20日に東京都の緊急事態宣言を解除してまん延防止に移行させると決めた時点で、国民の誰もが感染再拡大を予想していた。テレビの街頭インタビューでは「こんなに人がいっぱいなのに(宣言を)解除して大丈夫?」と不安視する声が上がっていた。
実際、東京の新規感染者は、既に宣言期間中の6月12日に30日ぶりの前週同曜日増となり、解除直前には前週を上回る傾向が顕著になっていた。GWの連休後、繁華街の人出は増加の一途で、変異株に占めるインド株の割合も6月上旬には3割を超えていた。早晩、リバウンドに転じる兆候はクッキリだったのだ。西村経済再生相だって、宣言解除当日、テレビで「人流が増えているので、必ず新規陽性者の数は増える」と発言していたではないか。
それなのに、菅政権は宣言を解除し、酒類の提供を解禁。五輪会場に観客を入れることにこだわって、その前提となる、まん延防止解除後の「観客上限1万人」まで決めてしまった。
国民の警戒感を緩ませ、人流を増大させる愚策を断行したのだから、結末は当然、予想できただろう。なぜ驚くのか。
「首相は自分の判断に自信を持っていて、他の議員の提案を受け入れることはほとんどない」
1日の毎日新聞に閣僚経験者のこんな談話が載っていた。コロナ対策が「場当たり」「なし崩し」で、効果的な手が打てない元凶は、自分しか信じない菅の性格にある。
菅は昨年来、自ら描いてきた「総裁再選シナリオ」に固執。コロナ感染を抑えて五輪を成功させ、その勢いのまま衆院を解散し、総選挙に勝利して、自民党総裁選で再選する、というシナリオだ。だから、感染状況がどんなに悪化しても、国民の半数以上が五輪開催に反対しても、聞く耳持たずで思考停止状態。「ワクチン接種で世論の空気は変わる」と感染対策をギャンブルにまでした。
その末路が第5波である。「無知の知」すら持ち合わせていない菅に苦言を呈する閣僚はいない。それどころか、西村も田村厚労相も「必要な場合は躊躇なく緊急事態宣言を再発令する」と予防線を張って責任逃れに終始する。
専門家だって、データを分析すればこうなることがわかっていたのに、政府にお追従。「五輪中止」の提言を引っ込めた責任を感じているのかどうか。
メディアも同罪だ。五輪を意識して政府への批判は打ち止め。人流増をしきりに報道するのは、「我々は警告している」というアリバイでしかない。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「菅首相の頭の中にあるのは、秋の総選挙を乗り切って総裁選で再選することだけなので、周囲が見えなくなっている。『ワクチンさえあれば、五輪も大丈夫』と突っ走ってきましたが、根拠のない希望的観測です。世論にアピールできるようなコロナ対策ができていれば、都議選だって応援演説に立って訴えていたでしょう。言えることがないから、その場しのぎで『安心安全』の念仏を唱えるしかないのです」
菅政権がさらに3年続いてもいいのか
それでも無能政権は、いまだ甘い見通しに期待を寄せる。「今後、感染者が増えても重症化しやすい高齢者の感染は減り、病床逼迫は避けられる」というものだ。しかし、1日に開かれた東京都のモニタリング会議で示されたデータは、それを完全に覆した。
確かに新規感染者は50代以下が全体の9割を占め、高齢者は激減している。しかしその一方で、50代以下の重症者も全体の4割に上り、40代や20代でも重症化しているのだ。インド株が主流となる「第5波」では、中年層や若年層の入院や重症化によって医療逼迫を招く恐れがあるということなのだ。
モニタリング会議のメンバーは、都内の医療提供体制の今後の見通しについて、「デルタ株の感染のスピードを考えると決して楽観できない」「第4波より速いペースで感染状況が悪化する可能性がある」と危機感を募らせていた。
国立感染症研究所などのシミュレーションでは、「最も楽観的なシナリオ」ですら、インド株の強い感染力により、東京の1日の感染者は7月上旬に1000人に達し、その後、2000人まで増加する可能性があるという。五輪開催を考慮せずとも、これだけの感染爆発を招くのに、五輪会場に1万人の観客を入れたら、どうなるのか。シミュレーションでは、8月以降、東京都の病床使用率は限界に達する可能性があるという。第4波で大阪で起きた「医療崩壊」が、今度は東京で繰り返されることになりかねない。
昭和大医学部客員教授の二木芳人氏(臨床感染症学)はこう話す。
「現状はリバウンドというレベルではなく、明らかな再増加です。陽性者に占める変異株の比率も検査数を増やせば増やすほど拡大しています。これに対し、政府は『注意しながら緊張感を持って』と言うだけで、何の対策も打っていないのですから、むしろ五輪に向けて、さらに緊張感が緩んでいくのではないでしょうか。今後のことを想像するだけで恐ろしい。五輪にしても無観客が当然ですし、もう一度『中止』の議論が起きてもおかしくない状況です」
「無観客」言及は選挙対策
悲劇は誰も見たくない。だが、首相も閣僚も専門家も焼け野原を見ないと、責任を取らないのか、辞めないのか。国民の命はどうでもいいのか。
さすがに菅は1日、改めて、五輪の「無観客」開催の可能性に言及した。公明党の山口代表も1日「無観客を視野に入れた上で」と言い出した。
だが、だまされちゃいけない。こんなの選挙対策の一環だ。特に公明は、4日投開票の都議選での全員当選に赤信号がともり、焦りまくっている。菅にしても、「小池都知事が都議選最終盤で五輪の無観客開催に踏み込む可能性がある」といった臆測が飛んでいたから、先手を打ったに過ぎない。
毎度の政局がらみの思惑ばかり。こうなったら、都議選はじめ、あらゆる選挙で鉄槌を下すしかない。
「野党がだらしないからと、結果的に選挙で自公を勝利させ、多数を与えることになれば、菅政権は『我々は信任を得た』と大威張りになって、国民生活を顧みない今まで通りの悪政を続けるだけです。菅首相は自らが描いたシナリオ通りに総裁選で再選し、菅政権がさらに3年続くことになってしまいますよ。ここは一回、自公政権にお灸をすえる必要がある。そこまで考えた投票行動を起こすかどうか、特に無党派層がカギを握っています」(前出の野上忠興氏)
コロナ敗戦をこれ以上、許容するのかどうか。未来は国民自身の手の中にある。