2020年8月5日水曜日

05- コロナ感染再拡大 目詰まりは政権にあり(姜 尚中氏)

 PCR検査(抗原検査を含む。以下同)の拡充に反対する厚生省や分科会の人たちは、その理由に特異度や感度の低さをあげますが、唾液を検査すれば感度はほぼ100%になるし、特異度についても検査を2回行うことで9997%まで上げることが出来ます。
 もう一つの理由として、新型コロナ特措法により感染者は医療施設に収容する義務が生じるので、軽症者や無症状者で病床が占められる(から本当に入院が必要な中等症以上の患者が入院できなくなる)ことなどの、指定感染症に伴う様々な制約をあげています。
 しかしそれらは第1波の時に分かったことなのに、既に半年以上が経っているにもかかわらず法の改正をしようとしないし、中国や韓国の様に隔離施設の拡充にも取り組んでいません。
 要するに厚労省や分科会はどうすれば検査を拡充できるかではなく、拡充すべきでない理由を挙げてサボタージュすることを目指している訳です。もしも検査を拡大するとクラスターの追跡が出来なくなるからというのであれば、甚だしい「本末転倒」です。

 政治学者の姜尚中氏は、西日本新聞に「コロナ感染再拡大 目詰まりは政権にあり」とする記事を出し、その中で指定感染症に関する政令を変えれば、民間の医療機関で自由に無料でPCR検査を受け、陽性者をしかるべき収容施設に一定期間隔離するなどの対策は可能なはずだとしています。
 目からウロコが落ちる話で、政府・厚労省が発する政令であれば、簡単に変更できるわけです。言うまでもなくそんなことは政府・厚労省は最初から分かっていた筈です。
 政府の無為無策乃至サボタージュは明瞭です。

 併せて日刊ゲンダイの記事「加藤厚労相“指揮権放棄” コロナ禍から逃げまくり表に出ず」を紹介します。
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オピニオン
【コロナ感染再拡大】目詰まりは政権にあり
姜尚中 西日本新聞 2020/8/3
 福岡や熊本など、九州にも不安が広がっているに違いない。東京や大阪、名古屋などの大都市やその周辺、さらに地方の政令市などが新型コロナウイルス感染のエピセンター(震源地)になり、感染経路がたどれないケースが確実に増え続けているからだ。
 既に第2波が始まっているとみた方が妥当ではないか。政府の果断な対応が望まれるところだが、不安が不安の連鎖を呼び、社会はパニックに陥りかねない危うさを伴っている。政府の対応は、ちぐはぐで場当たり的な印象を拭いきれない。
 観光振興などの景気対策に重きを置くべきなのか、感染拡大を防ぐ対策を優先すべきなのか。そのバランスを取るのは至難の業であるにせよ、アクセルとブレーキを同時に踏むような対応は、国民に戸惑いと混乱をもたらすだけである。しかも、国と東京都との反りが合わず、責任のなすり合いのような醜態を演じているのだから、国民は何を信じていいのか、途方に暮れざるを得ない。
    ◆   ◆ 
 一時期、安倍政権は世界が驚嘆する防疫の「日本モデル」の成功を喧伝(けんでん)していたが、それは主に外出や休業の要請を愚直に順守した国民の涙ぐましい努力のたまものであった。肝心要のPCR検査数に至っては、今もって先進諸国や東アジア諸国と比較しても最低水準であり、隔離施設や医療関係者の配置も進んでいるとはいえない。
 テスト(検査=test)、トレース(追跡=trace)、トリート(治療=treat)の「3T」が感染拡大を防止し、制御する「アルファであり、オメガ」(全体像)であることは全世界に共通している。
 5月4日の記者会見で、安倍首相はPCR検査数の少なさについて「どこかに目詰まりがある」と指摘したが、飛躍的に改善された形跡はない。検査数抑制の背景に新型コロナウイルス感染症を指定感染症に定めた政令(令和2年1月28日政令第11号)の縛りがあり、感染者の隔離措置が避けられず、病床の逼迫(ひっぱく)や医療崩壊につながりかねないなら、政令を変えればいいだけだ。政令はあくまで内閣の出す命令で、法律ではない。
 1月の終わりの時点で、新型コロナウイルスがこれほどパンデミック化し、世界を揺るがすとは想定されていなかったはずだ。春に予定された中国の習近平国家主席の国賓招待と夏の東京五輪・パラリンピック開催を政権のレガシーあるいは浮揚策にしようという思惑が、先の政令の縛りに手を付けることをためらわせたのかどうか。
    ◆   ◆ 
 憲法上疑義があるとして国論を二分した感のある平和安全法制を成立させた安倍政権である。指定感染症に関する政令を変え、民間の医療機関で自由に無料でPCR検査を受け、陽性者をしかるべき収容施設に一定期間隔離するなどの対策は可能なはずだ。
 ウイルス防疫のイロハのイとも言えるPCR検査数に対する、意図的あるいは無意図的な消極姿勢が、市中感染の実態が分からないまま新規感染者数が不気味に拡大し、不安を広げる一因になっていることは否定できない。
 目詰まりしているのは医療現場を含め、具体的な当事者と政権とのコミュニケーションであり、両者の間でフィードバックがなされないことが、ちぐはぐな対応の遠因になっているのではないか。
 一体、政府はどこを見て政策を打ち出しているのか。このままでは参院予算委員会(7月16日)で児玉龍彦東京大名誉教授が喝破したように、東京はミラノやニューヨークの二の舞いになりかねず、目を覆いたくなる事態にならないとも限らないのである。

【略歴】1950年、熊本市生まれ。早稲田大大学院博士課程修了後、ドイツ留学。国際基督教大准教授、東大大学院情報学環教授、聖学院大学長など歴任。2018年4月から鎮西学院院長。専攻は政治学、政治思想史。著作に「母の教え」など。


加藤厚労相“指揮権放棄” コロナ禍から逃げまくり表に出ず
日刊ゲンダイ 2020/08/04
 コロナ禍から逃げまくるのは、安倍首相だけではなかった。このコロナ禍で陣頭指揮にあたるべき加藤厚労相の存在感が、めっきり薄れている。
 週2回の定例記者会見には出てくるものの、7月の会見時間は1回平均たったの21分。短いときは15分足らずで終了だ。さらに、自身のSNS上からも姿を消していた。

 ダイヤモンド・プリンセス号で集団感染が発生していた今年1月下旬を境に、本人によるツイートはまったく更新されていない。1月23日のイベント視察の投稿を最後に現状は、厚労省や首相官邸の公式アカウントの投稿を、自身のコメントを付けることなくリツイートするのみ。テレビ出演などの必要な告知は「スタッフ」に任せ、加藤氏本人は徹底して表に出てこないようだ。
 一方、コロナ担当として矢面に立つ西村経済再生相は、たとえ批判的なリプライがきても、毎日自身の言葉で情報発信している。

 もともと加藤氏はSNSが苦手なのだろうか? 調べてみると、そうでもなかった。昨年9月の大臣再就任直後、ラグビーW杯時には<初めてのラグビー観戦に興奮>とツイート。元日には<新年あけましておめでとうございます!!>とノリノリで、今度は新国立競技場でサッカー天皇杯決勝を観戦。<東京オリンピック・パラリンピックが楽しみです>と、絵文字に写真、ハッシュタグまで付けてご機嫌だった。
 今年1月は自ら9回投稿するも、2月以降は徹底した“ノー・ツイート”を貫く。

 厚労省職員の「過労死ライン超え」の多忙が報じられる中、当の本人は“指揮権放棄”で、西村氏に責任を丸投げ。国民の健康よりも経済が優先される「Go To」の愚策にも「待った」をかけずスルー。コロナ禍から逃げまくり、すっかり「あいつ今何してる?」状態だ。
 厚労相なら、もっと積極的に姿を現し、国民に事態を説明すべきだ。