2020年8月22日土曜日

説明もなく体調を忖度させて批判を封じる姑息(日刊ゲンダイ)

 安倍首相は、体調について説明をせず病気について否定も肯定もしないまま国民に忖度させることで批判を封じ、何とかこの場をしのごうとしています。
 盟友といわれる甘利氏は、安倍首相について「責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と述べましたが、われわれが知っているのは、責任逃れに終始し、コロナ禍で生活を維持できるかの国民不安をよそに豪華会食にいそしみ、会見も国会審議も拒否、コロナ禍の真っただ中でも午後から官邸に出勤するという首相の姿でしかありません。

 かつて首相がようやくコロナ禍に向けて(私財ではなく)国税を大幅に投入する決断をし、真水ではなくあらゆる名目の金額をかき集めて「対策費」と称した時、「100年に1度の国難」だからと訴えました。
 それなのにいまの、国会を開かず会見を行わずに海外紙から姿が見えないと評されている有様は、まさに100年に1度の国難」に当たり「あるべき姿」の対極にあるものです。

本当に責任感が強い首相なら、体調不良で会見も国会も開けなかったことを国民に詫び、この国難に不眠不休で対応する覚悟の後進に道を譲るでしょう」(山田厚俊氏
 それこそがあるべき姿で、体調不良を公表することで批判を鎮めようというのは余りにも姑息です。
 日刊ゲンダイの2本の記事を紹介します。
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退陣が国民のため これで政権ブン投げなら歴史も驚く漫画的結末
日刊ゲンダイ 2020 年 8 月 20 日
記事集約サイト「阿修羅」より転載
「体調管理に万全を期すために17日、検査を受けた。これから再び仕事に復帰して頑張っていきたい」
 3日間の夏休みを終えた安倍首相が19日午後から公務に復帰。官邸エントランスで記者団のぶら下がり取材に応じた。17日に“検診”のため慶大病院を訪れ、約7時間半もの長時間にわたって滞在したことで、健康不安説は一気に広がっている。

「ぶら下がりの映像を見ると、顔色は少し良くなったようにも感じますが、足取りは相変わらず重く、歩くスピードが遅かった。政府・与党内では総理の体調を不安視する声が大半です。それを政権幹部は『問題ない』と打ち消していますが、13年前のような突然の政権ブン投げもあり得るのではないかと囁かれてる。麻生副総理が臨時代理で政権を担うという具体的な話も流れています」(自民党中堅議員)
 官邸のスポークスマンよろしく活躍する政治ジャーナリストの田崎史郎氏も、ぶら下がりの映像を見て「覇気がない、強さがないなという感じを持ちました」と体調を案じていた。さらに「今の政界の最大の関心事は、安倍総理の健康状態になっているんですね」とも言っていたが、そんな政治状況を許容していていいのか。今、政治家の最大の関心事はコロナ対策のはずであり落ち込みが激しい経済をどう立て直し、国民生活を守る方法を考えることではないのか。

 普通、政治家の健康不安情報はトップシークレットだ。お忍びで受診することも可能だろうに、首相専用車で仰々しく車列を組んで病院を訪れる様子が生中継された。ちょっと異常な事態で、安倍の検診は、19日に閉会中審査が開かれた厚労委でも話題になった。
 野党議員から「単純な検査だという報道もあるが、片や健康不安を抱えておられるという話もある」と質問された加藤厚労相は、「日頃感じている中においては、私はこれまでとお変わりはないと認識しています」とお茶を濁した。

側近は「休ませろ」の大合唱
 菅官房長官も18日のBS番組で「夏休みの一環として人間ドックの追加検査に行った」「いろいろ尾ひれがついて、入院するとか問い合わせがあったが、前から決めていたこと」と説明したが、健康不安説を明確に否定する発言は誰からも出てこない。
 その一方で、自民党の世耕参院幹事長は19日の会見で「休んで場所を変え、気分転換するのも必要」と、さらに休養を取るよう安倍に勧めた。体調不安を言外に認めるようなものだ。世耕と同じく安倍側近の甘利税調会長に至っては、「なんで次から次へと日程を入れて総理を休ませないんだ!」「本人が休もうとしないんです」という首相秘書官との茶番めいたやりとりまでツイッターで明かして、安倍には休養が必要だと訴えている。

「官邸の統制が利かなくなっているのか、首相の退陣準備のシナリオなのか分かりませんが、これまで隠してきた首相の体調不良が急にオープンになり、党内が浮足立っている。側近議員は『休ませろ』の大合唱で、よかれと思ってやっているのでしょうが、これでは贔屓の引き倒しになりかねません。
 首相の体調を巡る政界の反応は、コロナ禍に苦しむ国民の感覚とあまりにかけ離れています。多くの国民は、早く国会を開いて、与野党で建設的なコロナ対策を話し合ってほしいと願っている。首相の体調問題で国会を開けないのなら、きちんと国民に説明して、有事の対応ができる人に譲ってほしい
 側近も首相の体調を心配するのなら、職を辞して治療に専念するよう進言するのが本来の役割ではないでしょうか。病気を責める人は誰もいません。体調不良を理由に政治が混迷し、コロナ対策が後回しになってしまうことが問題なのです」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

説明もなく体調を忖度させて批判を封じる姑息
 このコロナ禍で、何ひとつ有効な手だてを講じてこなかったのが安倍政権だ。使い道に困る小さな布マスクを送り付けて国民を困惑させ、通常国会を閉じて以降は「緊張感を持って注視」しているだけ。
 体調不良アピールで同情論が盛り上がり、会見や国会を開くよう求める声を「病人を酷使する気か」と批判するムードもあるが、それは違う。体調についての説明もなく、病気について否定も肯定もしないまま忖度させて、表舞台から逃げるのは姑息だ。
 自身も睡眠障害とやらで雲隠れし、大臣室での現ナマ受領をウヤムヤにした甘利は、安倍について「責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている」と言っていたが、どこの首相の話だ? パラレルワールドでも存在するのか。われわれが知っているのは、責任逃れに終始し、国民の不安をよそに豪華会食にいそしみ、会見も国会審議も拒否、このコロナ禍に午後から官邸に出勤してちょろっと仕事をしたフリをし、午後6時台には私邸に帰る優雅な首相の姿でしかない

本当に責任感が強い首相なら、体調不良で会見も国会も開けなかったことを国民に詫び、この国難に不眠不休で対応する覚悟の後進に道を譲るでしょう。8年近い長期政権で、何があっても擁護する人と批判する人に分かれ、国内の分断が進んでしまいました。安倍首相が身を引くことで、停滞した国政を取り戻すこともできます。新しい自民党トップの下、与野党が知恵を出し合って国難を乗り越えるべき局面です。首相の体調を政治の駆け引きに使うべきではありません」(山田厚俊氏=前出)

マンガ好きの麻生もビックリ
 首相の体調はどうなのか、来年秋の任期満了を待たずにブン投げる可能性もあるのか、国民はよく分からないまま、24日には大叔父の佐藤栄作が持つ連続在職最長記録の2798日を更新して、安倍が歴代最長の称号を手にする。文字通り歴史に名を残すわけだ。その時、大マスコミはその歴史的業績をどう評価するのか。第2次安倍政権は一体、何を成し遂げたのか。
「ナッシングですハリボテのアベノミクスはコロナで完全に吹き飛ばされ、GDPの落ち込みはリーマン・ショック時を大きく超えて国内経済は瀕死です。官製相場で株価を吊り上げていただけですから、実体経済はメタメタで回復には時間がかかる。得意と喧伝していた外交だって、拉致問題も北方領土問題も後退してしまった。米国追従を加速させ、血税で武器を大量に買わされただけです。モリカケサクラなど数々の疑惑にフタをして、国民を騙し、分断し、法秩序を無視して延命してきた。そういう最長政権なのです」(政治評論家・森田実氏)
 よくもまあ、こんな政権が8年近くも続いてきたものだ。安倍政権がもたらしたものは国民の分断、民主主義の破壊、歴史への冒涜だけだったのではないか。

 今年の戦没者追悼式では、ついに歴史と向き合う趣旨の文言が消えた。海外メディアからも「安倍の危険な歴史修正主義」(米ニューヨーク・タイムズ)、「安倍に受け継がれた歴史修正主義」(仏ル・モンド)などと危険視されてきた首相だ。
これだけの長期安定政権で、国民のためにやったことは皆無だし、米国の言いなりと見抜かれて国際的な地位も低下する一方です。体調が悪いなら、せめて引き際くらいは潔く、自らの無能と不明を恥じて引退してもらいたい。自民党も、総理を休ませろと甘やかしている場合ではない。体調不良を理由に国会も開かず、首相の保身延命だけで居座られたら、国が潰れてしまいます」(森田実氏=前出)
 退陣すれば訴追される恐れもあり、辞めるに辞められないのかもしれないが、そんなストレスは安倍個人の問題で、コロナ禍にあえぐ国民生活とは関係ない。体調不良アピールはコロナ対応で迷走した責任逃れでトンズラする準備だとしても、それで過去の行状が免責されるわけでもない。

 体調がどうなのかも明らかにしない首相がズルズル居座り、政治空白が続くことが問題だ。その揚げ句、また政権ブン投げなんてことになれば、歴史も驚くマンガ的結末である。マンガ好き麻生もビックリだろう。


安倍首相に“がん説”まで…日程次々キャンセルで自民党騒然
 日刊ゲンダイ 2020/08/21
 夏季休暇から公務に復帰して2日連続の午後出勤。安倍首相の体調不安がくすぶり続けている。20日は一斉に、「がんが見つかったらしい」という情報まで流れた。
◇  ◇  ◇
 安倍首相の健康を巡って、永田町は浮足立ってきた。驚いたのは、安倍首相が出席する予定だった会議や会合が次々、中止となっていることだ。
 自民党は毎週火曜の定例役員会について、25日は「特段の議題がない」として取りやめを決めた。27日には、二階幹事長が主催して、安倍首相の連続在職歴代最長(24日に2799日となり、佐藤栄作の記録を塗り替える)を祝うパーティーが開かれる予定だったのに、それも延期となった。自民党の森山国対委員長が20日、「いろんな噂は出ているが、公務に復帰して淡々と職責をこなしているので心配ない」と不安を打ち消したが、誰も信用していない。

 さらに20日は、与野党議員の間に「安倍首相にがんが見つかった」という情報まで駆け巡った。それも2通りの説だ。
<亡父・晋太郎と同じ膵臓がんだった。これで秋は政局。9月の自民党人事の前に退陣。10月に新総裁で解散総選挙>
<大腸がんだった。米大統領選の行方を見定めて、12月退陣>
 安倍首相の健康問題が、9月下旬にも行われるとみられる自民党役員・内閣改造人事や解散総選挙と絡めて語られるようになり、早期の「退陣観測」が強まるばかりなのである。

人事を巡る政局も激化
 そんな中で安倍首相は20日、自身の後継の“最右翼”と目してきた岸田政調会長と官邸で20分会談。「『後をよろしく』と頼んだのではないか」との臆測を呼んだ。一方、二階氏と菅官房長官が昨夜、都内の日本料理店で会食。今後の政権運営をめぐる意見交換とされ、いよいよ「安倍退陣」を前提にした権力闘争に火がついた状況だ。
「9月の人事で総理は二階さんを幹事長から外したがっているが、二階さんは留任したいので、『安倍・麻生・岸田vs二階・菅』で牽制し合っている。しかし、体調悪化で、もはや人事どころじゃないだろう」(自民党関係者)

 政治評論家の野上忠興氏もこう言う。
「安倍首相は本来『日帰り検診』ではなく、1週間程度、入院して休養する計画でしたが、コトが大きくなるのを警戒して急きょ、変更した。ですが、むしろ大騒ぎになって、歯車が狂ってきた。党内政局は激しくなり、任期最後の人事も思うようにやれない。それらが、病気に大敵のストレスを、さらに抱え込む材料にもなっています」
 いつまで持つのか。