2020年8月3日月曜日

PCR検査を無症状でも網羅的にの声が 経済団体・自治体・メディアに広がる

 コロナ第2波(仮称)は、すでに数値的には第1波を大幅に上回っています。
 全国のコロナの陽性者数は第1波が一応沈静した5月31日時点で16,973人であったのに対して、8月1日には37,623人に達し、この間の増加数20,650人は第1波の累計数を上回っています。
 確かに空き病床数や院内感染の規模等は「今の瞬間では」まだ第1波ほど逼迫していませんが、ある限度を超えれば同じ現象が起きることに変わりはありません。
 何よりも、またもや第1波とほぼ似た「検査を受けられない」事態がすでに生じています。このことは看過できません。
 第1波の時に、日本のPCR検査数が桁外れに少ないことは海外から指摘されていて、鎮静後には早急にその拡充に取り組むことが強調されていたのですが、実体は僅かに2倍乃至3倍程度に拡充されただけで、医療施設の拡充は全く進まずむしろ弱体化しています。

 多くを語るまでもなく、コロナの感染拡大を防止するためにはPCR検査を拡充することしかなく、検査能力を現状の少なくとも10倍~20倍にする必要があります。
 国は「経済を止める」ことの不可能性を強調しますが、そのためには「広く検査し感染者を隔離する」しかないことに何故気が付かないのか不思議なことです。

 しんぶん赤旗と東京新聞の記事を紹介します。
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「攻めの検査を」無症状でも 網羅的に
経済団体・自治体・メディアに広がる 拡充求める声
しんぶん赤旗 2020年8月2日
 新型コロナウイルス感染者急増のなかで、日本共産党の志位和夫委員長は7月28日、感染の急拡大を防止するために、PCR検査を大規模に網羅的に行うよう安倍晋三首相に申し入れました。これと前後して、経済団体や自治体、メディアなどから感染拡大抑止のためにPCR検査の拡充を求める声や検査の重要性を指摘する声が相次いでいます。

 日本商工会議所と東京商工会議所は7月28日、PCR検査体制の拡充を求める要望書をまとめました。要望書では感染拡大による中小企業への影響に懸念を示し「社会経済の活動レベルを落とさないようにするためには、今や社会経済活動維持の基礎的インフラである検査体制の拡充と医療提供体制の安定が急がれます」と指摘。政府に対して感染動向を素早く把握する検査体制の拡充を求めています。無症状でも感染リスクの高い場所にいる人などを徹底的に検査する「攻めの検査」は、感染者の早期発見や重症者数の抑制に大きな効果が期待できると述べています。

 千葉県では7月30日に、木更津、君津、富津、袖ケ浦の4市長が連名で森田健作知事に対し、PCR検査センター設置に向けた支援などを要望。同日には、銚子、旭、匝瑳(そうさ)、香取の4市長と神崎、東庄、多古の3町長が合同で森田知事と会談し、検査センターが必要だと求めたことが報じられています。

 東京都の小池百合子知事もPCR検査体制強化の重要性を強調しています。「『感染拡大特別警報』の状況」と述べた同日の会見では「今、われわれが採りうる唯一の策は、積極的に検査をやって、そして陽性患者を早期に発見し、感染拡大を抑制していくということ」だと語りました。

 東京都医師会も同日の会見で、感染震源地(エピセンター)での徹底した対応を訴え、都内の医療機関1400カ所を目標にPCR検査を拡大すると表明しています。

 メディアでは、PCR検査拡充の遅れを問題視し、早急な検査体制構築と積極的な検査を求める論調が目立っています。

「日経」は1日付3面で「PCR目詰まり再び」との見出しで、春の感染拡大時と同様に検査がスムーズに進まない状況を特集。同日付社説で「政府や自治体が結果的に『宿題』をさぼってきた責任は重い」「簡便なPCR検査や、抗原検査の普及を急ぎたい」と指摘しています。

 同日付「読売」社説も「PCR検査 拡充が感染抑止につながる」との見出しを掲げ、感染者が集中する地域で「攻めの検査」を実施して感染者を早期に隔離すれば「感染の連鎖」を断ち切れるとしています。


増えないPCR検査 安倍首相が旗振れど、現場は改善せず  
東京新聞 2020年7月29日
<検証・コロナ対策8>
 「これでは永久に検査を受けさせられないじゃないか」。医師の尾崎治夫(68)は保健所の担当者を相手に、受話器を握り締めたまま怒りに震えた。新型コロナウイルスの感染が拡大していた3月下旬、東京都東久留米市で開業する尾崎の診療所にも、患者が次々と訪れていた。
 診察でPCR検査が必要だと判断したが、診療所に検査機器はない。保健所に電話すると話し中。1時間後にやっとつながるが、「肺炎の症状はありますか」などと細かく聞かれる。検査ができる病院の紹介を求めると、「重症ではない」と断られた
 首相の安倍晋三(65)は2月末、医師が必要と判断すれば「すべての患者がPCR検査を受けられる十分な検査能力を確保する」と言明していた。日本医師会が調べると、尾崎が経験したような「不適切な事例」は、3月中旬までに全国で290件あった

◆「この10年、何を…」
 安倍の表明から4カ月余り。経済再生担当相の西村康稔やすとし(57)は7月になっても「検査体制を大幅に拡充していく。計画的に進めていくことが大事だ」と国会で述べた。不十分さはまだ解消していない。

 10年前、政府の有識者会議は、新型インフルエンザの流行を受けて検査体制の強化を提言していた。コロナ対策を話し合う政府専門家会議のメンバーはこう話す。「(提言は)予言書のようだ。この10年、(時の)政権は何をしてきたのか」
 厚生労働省は10年前から、検査体制の不十分さを把握していた。新型インフルエンザ流行後の2010年、当時の政府有識者会議は「とりわけ」と強調した上で、PCRなどの検査体制強化を提言した。

◆受診抑える動き
 だが、新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて見つかった今年1月中旬から1カ月たっても、検査能力は1日わずか300件。日本は欧米などと異なり、PCRとは別の検査が普及しており、提言に沿った改善は図られていなかった。
 2月16日、政府専門家会議の初会合では、不十分な検査体制を前提に「重症で原因が不明の時にPCRを回すのが妥当」との意見が出る。翌日に厚労省は「37・5度以上が4日間」という相談・受診の目安をつくる。
 これによって、感染の疑いを心配しても受診を控える動きが出てくる。相談先の保健所も、検査で陽性になれば入院先などが必要だが、病床は空いていないため検査に慎重となった。
 「必要な検査が受けられない」との批判が相次ぐと、安倍は4月6日、「1日2万件」にすると表明する。しかし、保健所は相談対応や検査の判断、入院先の確保、感染者の追跡調査と多忙を極めていた。相談にすらたどりつけない状況が生まれる。

◆早く検査できていれば
 感染が拡大していた4月上旬、世田谷保健所の相談窓口は朝から電話が鳴り続けた。相談件数は前の週から倍増。区内に単身赴任していた50代の男性会社員は3日、「感染したかも」と九州の妻にLINE(ライン)で伝える。保健所に何度も電話するが、つながらない。11日、肺炎で亡くなっているのが見つかり、死後に感染が判明する。友人は「どれほど不安だったか」と漏らした。
 4月中旬、都医師会長の尾崎治夫は都などと連携して、保健所を介さずに検査ができるPCRセンターをつくり始める。「自分たちでやるしかない」と考えた。

 このころ、練馬区の女性(37)は発熱とせきが続いていた。診療所や病院では「院内感染の恐れがある」などと言われ、診察を断られる。保健所に連絡しても「医師の受診がない」と検査さえ受けられない。
 「同居する両親や娘(5つ)にうつしてしまうかも」と自宅の寝室にこもり、不安で何度も泣いた。発症から28日目にようやく、地元にできたPCRセンターで検査を受けることができる。結果は陰性だった。
 陰性が出ると病院は診察に応じた。診断結果はぜんそくとへんとう炎。「もっと早く検査できていれば、ぜんそくの治療に切り替えられたのに」と憤る

◆「政治家が今まで以上に」
 検査能力が1日2万件に達したのは、感染拡大のピークから1カ月以上が過ぎた5月15日。実際の検査数はその半数未満にとどまった。安倍は「目詰まり」と説明したが、その原因はだれがつくったのか。
 政府専門家会議副座長の尾身茂(71)は、10年前の提言が生かされなかった理由を国会で問われ、困惑気味に答えた。「政治家の先生たちが今まで以上にやっていただくことが必要」(敬称略、肩書は当時)


新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ
2020年7月28

内閣総理大臣 安倍晋三殿
日本共産党幹部会委員長 志位和夫

 新型コロナウイルスの感染急拡大は、きわめて憂慮すべき事態となっている。感染の急激な拡大が、医療の逼迫(ひっぱく)、さらに医療崩壊を引き起こし、救える命が失われることが、強く懸念される。
 にもかかわらず政府が、感染拡大抑止のための実効ある方策を打ち出さず、反対に感染拡大を加速させる危険をもつ「Go Toトラベル」の実施を強行するなどの姿勢をとっていることは、重大である。
 現在の感染急拡大を抑止するには、PCR等検査を文字通り大規模に実施し、陽性者を隔離・保護するとりくみを行う以外にない。
 この立場から、以下、緊急に申し入れる。
(一)
 感染震源地(エピセンター)を明確にし、その地域の住民、事業所の在勤者の全体に対して、PCR等検査を実施すること
 現在の感染拡大は、全国でいくつかの感染震源地(エピセンター)――感染者・とくに無症状の感染者が集まり、感染が持続的に集積する地域が形成され、そこから感染が広がることによって起こっていると考えられる。
 たとえば、東京都では、新宿区は、感染者数、陽性率ともに抜きんでて高くなっており、区内に感染震源地が存在することを示している。東京の他の一連の区、大阪市、名古屋市、福岡市、さいたま市などにも感染震源地の広がりが危惧される。
 政府として、全国の感染状況を分析し、感染震源地を明確にし、そこに検査能力を集中的に投入して、大規模で網羅的な検査を行い、感染拡大を抑止するべきである。
 これらの大規模で網羅的な検査を行う目的は、診断目的でなく防疫目的であること、すなわち無症状者を含めて「感染力」のある人を見つけ出して隔離・保護し、感染拡大を抑止し、安全・安心の社会基盤をつくることにあることを明確にしてとりくむ。
(二)
 地域ごとの感染状態がどうなっているのかの情報を、住民に開示すること。
 たとえば、東京都では、新規感染者数とともに、検査数、陽性率を何らかの形で明らかにしている自治体は、14区市(新宿区、中野区、千代田区、大田区、世田谷区、足立区、台東区、墨田区、中央区、北区、品川区、杉並区、八王子市、町田市)にとどまっており、他の自治体では検査数、陽性率が明らかにされていない。
 全国をみても、20の政令市のすべてで、市内の地域ごとの検査数、陽性率が明らかにされていない。これではどこが感染震源地なのかを、住民が知ることができない。
 ニューヨークなどでは、地域ごとの感染状態が細かくわかる「感染マップ」を作成し、明らかにしている。
 感染状態の情報開示は、あらゆる感染対策の土台となるものである。
(三)
 医療機関、介護施設、福祉施設、保育園・幼稚園、学校など、集団感染によるリスクが高い施設に勤務する職員、出入り業者への定期的なPCR等検査を行うこと。必要におうじて、施設利用者全体を対象にした検査を行うこと
 感染拡大にともなって、これらの施設の集団感染が全国で発生しており、それを防止することは急務である。
(四)
 検査によって明らかになった陽性者を、隔離・保護・治療する体制を、緊急につくりあげること。
 無症状・軽症の陽性者を隔離・保護するための宿泊療養施設の確保を緊急に行う。自宅待機を余儀なくされる場合には、生活物資を届け、体調管理を行う体制をつくる。
 中等症・重症のコロナ患者を受け入れる病床の確保を行う。新型コロナの影響による医療機関の減収補償は急務である。減収によって、医療従事者の待遇が悪化するなどは絶対に許されない。医療従事者の処遇改善、危険手当の支給、心身のケアのために、思い切った財政的支援を政府の責任で行うことを強く求める。
 もはや一刻も猶予はならない。日本のPCR検査の人口比での実施数は、世界で159位であり、この異常な遅れは、どんな言い訳も通用するものではない。政府が、自治体、大学、研究機関、民間の検査会社など、あらゆる検査能力を総動員し、すみやかに行動することを強く求める。