2020年8月25日火曜日

7年8ヵ月も続く史上最悪の悪夢(植草氏)/政治遺産なき歴代最長政権(竹本氏)

 政治経済学者の植草一秀氏が、「7年8ヵ月も続く史上最悪の悪夢」とする記事を出しました。
 記事中に出てきますが、この間安倍政権は特定秘密保護法を始め、戦争法など数々の反動立法を行っただけでなく、種子法や水道法なども、米国グローバル企業に貢ぐために米国の言うがままに改廃しました。
 安倍首相は右翼・保守を自認しながら対米自立は全く志向せず、ひたすらトランプに従属して国益を害して来ました。理解しがたいことです。
 デフレ脱却を謳って早々に始めた「アベノミクス」は何年経っても目標の物価上昇率2%を達成できず、国費を湯水の如く投入して実現したのは株価のバブル化だけでした。それで富んだのは投資家、富裕層、大企業たちで、大企業は史上空前の内部留保を実現しました。
 しかし労働者は貧しくなる一方で、この20年間、世界の中で1人当たりの実質賃金を減らした国は日本だけでした。安倍政権になってからは実に6%も減少し、その中でも最も低所得に喘ぐ非正規労働者の比率は実に37%に達しました。
 悪夢の「7年8ヵ月」というしかありません。
 植草氏のブログを紹介します。
 併せてロイターの記事「政治遺産なき歴代最長政権、ポスト安倍に思惑交錯」を紹介します。
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7年8ヵ月も続く史上最悪の悪夢
植草一秀の「知られざる真実」 2020年8月23日
安倍首相の首相としての連続在任期間が8月24日に歴代最長になる。
2012年12月に第2次安倍内閣が発足して、年末で丸8年になる。これまでの連続在任期間は佐藤栄作氏の2798日だった。
安倍首相の在任期間は長くなったが、長くなった以外に成果がない。
安倍内閣は経済の拡大を表看板に掲げてきたが、経済すら最悪の状況に陥っている。
日本の実質GDPは安倍内閣が発足した時点で498兆円(季節調整済、年率換算=2012年10-12月期)だった。
2020年4-6月期の実質GDPは485兆円になった。第2次安倍内閣が発足してから、日本のGDPはまったく増えていない。減ってしまったのだ。
第2次安倍内閣が発足してからの実質GDP成長率(前期比年率)単純平均値は-0.1%である。
2009年から2012年にかけての民主党政権時代の実質GDP成長率単純平均値は+1.7%。民主党政権時代の日本は東日本大震災、フクシマ原発事故に襲われ、極めて低迷した。
この低迷経済の民主党政権時代よりもはるかに悪いパフォーマンスを示しているのが第2次安倍内閣発足後の日本である。
労働者一人当たりの実質賃金は6%も減少した。世界最悪の経済パフォーマンスを示している。

この8年弱の期間に実行したことは、
特定秘密保護法制定
集団的自衛権行使容認憲法解釈閣議決定
戦争法制制定
共謀罪制定
TPP参加
種子法廃止
水道法改定
などである。
下村博文氏、甘利明氏の犯罪疑惑も浮上した。
森友学園への国有地激安払い下げ
虚偽公文書作成
に関する事件では、罪のない財務省職員を自死に追い込んだ。
加計学園に対して獣医学部解説で便宜を図った疑惑も浮上。
桜を見る会では公的行事を私的に利用した疑いが持たれるとともに、公選法違反疑惑も浮上した。
検察庁人事に不正に介入したことも記憶に新しい。
国民から称賛される実績は皆無である。

他方、刑事事件として立件すべき事案が次から次へと噴出してきた。歴代最長かつ歴代最悪の政権と評価することができる。
これほど劣悪な政権が長期間存続してきたことは、日本政治の劣化を如実に示す証左である。
2009年9月には鳩山由紀夫内閣という金字塔が打ち立てられたが、この偉業を支える力が乏しかった。
安倍内閣の特徴は敗戦後日本の傀儡政権代表と言える吉田茂内閣、岸信介内閣の首相の孫二人がトップに居座り続けていることにある。
日本の実効支配者である米国は、米国に隷従する政権を日本に創設し続けてきた。
この基本路線が維持されるなかで、米国傀儡の安倍内閣の長期存続が米国によって主導されてきたと言える。
米国による日本支配の構造を刷新しようとしたがゆえに、鳩山内閣は激しい攻撃を受けた。
卑劣で不正な人物破壊工作が展開された。
鳩山内閣を破壊した主役は民主党内に潜んでいた隠れ自公勢力である。
菅直人氏と野田佳彦氏は辺野古米軍基地建設を推進するとともに、「シロアリ退治なき消費税増税」路線を強行に打ち立てた。この路線を敷いたうえで、安倍自民党に大政を奉還した
2013年7月参院選でメディアは衆参ねじれ解消に総力を注いだ。この選挙でねじれが消滅し、安倍内閣の暴走が加速した。
しかし、安倍内閣の長期存続により、日本は最悪の事態に陥った。1秒でも早い事態の是正が必要である。日本は一刻も早く現在の悪夢から脱却しなければならない

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政治遺産なき歴代最長政権、ポスト安倍に思惑交錯
 竹本能文 ロイター  2020/08/24
[東京24日] 24日に連続在職日数で歴代最長を達成した安倍晋三政権は、首相が目指す憲法改正など大きな政治遺産は残せていない。逆に足元では新型コロナウイルスや東京五輪の延期など、新たに背負った負の遺産の対応に追われている。支持率が過去最低水準まで落ち込み、体調不安もくすぶる中、永田町では早期退陣や解散・総選挙、ポスト安倍を巡ってさまざまな思惑が交錯している。

<憲法解釈変更で集団的自衛権>
安倍首相の連続在任日数は24日、2012年12月に再登板してから2799日が経ち、これまで最長だった佐藤栄作首相を抜いた。
この間、安倍首相はデフレからの脱却、ロシアとの間に横たわる領土問題、北朝鮮からの拉致被害者奪還、憲法改正、軍事力の強化と、過去の政権が成し遂げられなかった課題の解決に乗り出してきた。
しかし、物価は目標の2%に届く気配がなく、新型コロナの感染拡大による景気後退で絶望的な状態にある。「シンゾー」、「ウラジーミル」と呼び合ってきたロシアのプーチン大統領との協議は今や停滞、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長とはいちども会談できていない。
軍事力の強化は、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊が日本の域外で武力を行使することに道を開いた。しかし、第一次政権時から高く掲げてきた憲法改正にまでには踏み込めず、自衛隊を軍隊と位置付ける目標は果たせていない。

「明確な政治的レガシー(遺産)を残せていない」と、時事通信の元解説委員で、政治評論家の原野城治氏は言う。「自主憲法の制定は結局できなていない。外交面でも日中関係は最悪な状態、日韓もにっちもさっちも行っておらず、日ロも八方塞がりだ」

<反転の兆しない支持率>
一方で、全国に配布した「アベノマスク」、欧米などが打ち出した都市封鎖(ロックダウン)とは異なるあいまいな非常事態宣言、感染拡大が収まらない中での旅行・外食奨励策「GO TOキャンペーン」の実施といった一連のコロナ対策は、国民からの評判が芳しくない。
毎日新聞が22日に実施した世論調査によると、内閣支持率は34%と前月比2ポイント上昇したが、第2次安倍政権発足以来最低水準が続いている。不支持率は59%と高止まったままだ。
これまで安倍政権の支持率は、国会会期中に森友・加計学園問題などスキャンダルが起きて低下しても持ち直してきた。しかし、今年は国会が閉会し、公の場で野党に追及されなくなった6月中旬以降も反転する兆しが見られない。ある自民党幹部は、「コロナによる景気悪化、雇用悪化が理由」と話す。
与党内では、任期満了前の安倍首相辞任を望む声も聞かれるようになってきた。「首相が安倍さんのままでは衆院選は厳しい。首相交代、閣僚の若返りなど踏み切らないと自民党の支持率回復は難しい」と、別の自民党幹部は言う。
コロナ問題が落ち着くことを前提に、年末にも首相が退陣し、総裁選を実施したうえで、年明けに衆院解散とのシナリオも一部で浮上している。一方で、コロナ収束までには時間がかかり、来年10月の衆院任期間際まで解散は困難との見方もある。

<コロナと東京五輪>
任期前の早期退陣説に拍車をかけているのが、安倍首相の健康不安だ。17日に東京・信濃町の慶応義塾大学病院で日帰り検診を受けたことで、首相の体調への懸念が一気に広がった。
25日に予定されていた自民党の役員会がキャンセルされことや、首相の在任最長記録を受けて予定されていた27日の祝賀会が中止となったことも憶測を広げた。自民党幹部は、歴代最長政権の達成感から「辞任を検討してもおかしくない」と語る。
任期中に目指している東京五輪の開催も、コロナ感染の第2波が本格化する中では見通しにくい状況だ。
立教大社会学部の砂川浩慶教授は、コロナや延期された東京五輪など「現政権の負の遺産を処理した上で安倍首相が任期満了で退陣し、石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長など新首相のもとで来年解散するのが自民党としてはベストだろう」と言う。だが、「首相の体調が本当に悪いのであれば、麻生(太郎)副総理などが暫定的に首相に就く可能性がある」とみる。
暫定首相を選ぶシナリオであれば、自民党内では麻生氏のほか、岸田政調会長、菅義偉官房長官らの名前が挙がっている。