2020年8月23日日曜日

合流新党が批判されている本当の理由(植草一秀氏)

 立憲民主党と国民民主党の合流について、殆どのメディアが「元の状態に戻っただけ」などと批判的な主張を繰り広げています。
「オールジャパン平和と共生」の責任者で、野党の共闘問題について明確な理論を持っている植草一秀氏が「合流新党が批判されている本当の理由」とする記事を出して、両党の合流は日本政治刷新に向けての重要な第一歩になるとして、その理由を2006年に全メディアを挙げて「小沢一郎氏バッシング」に狂奔した例を引きつつ分かりやすく解説しました。
 決して「元の状態に戻った」のではなく、今度の合流により、「基本政策において自公と類似する主義主張を持つ者が取り除かれるかたちで新党が創設されることになると明確に述べています。

 植草一秀氏は20日にも「立国単純合流でない点が最大成果」とする記事を出していますので併せて紹介します。
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合流新党が批判されている本当の理由
植草一秀の「知られざる真実」 2020年8月22日
立憲民主党と国民民主党の合流は日本政治刷新に向けての重要な第一歩になる。
この合流について、メディアが批判的な主張を繰り広げている。
国民民主党の分裂、 選挙目当ての合流、 一部労働組合の支援拒絶、 政党交付金をめぐる内ゲバ  など、合流を批判する見解が多く流布されている。

しかし、この事実が逆に合流効果の大きさを示していると言える。取るに足らない事象であるなら声を高めて批判する必要がない。新たに発足する新党が既得権勢力の大きな脅威になる可能性を秘めていると判断されるから批判を受ける。
2006年3月に小沢一郎氏が民主党代表に就任したときも同じだった。小沢氏の民主党代表就任が重大な脅威になると考えられたために小沢氏は徹底的に批判された。挙句の果てに検察権力までが動員され、冤罪を捏造するという暴挙が繰り広げられた

今回の新党創設は年内にも予想される次期衆院総選挙に重大な影響を与えるものになる。
立憲民主と国民民主の単純な合流であったなら大きな期待は生まれなかった。しかし、新党の基本理念、基本政策に賛同できない者が合流に加わらない選択を示したことにより、この合流が大きな意味を持つことになった。

この意味で玉木雄一郎氏が果たした役割は、本人の思惑とは離れて大きなものになった。
日本を支配し続けてきた勢力は、これとは異なるかたちでの政界再編を目論んでいたはずだ。
「これとは異なるかたち」とは、現在の自公と類似した、もう一つの大きな塊をつくること。
玉木氏などが主張する「革新中道」あるいは「保守中道」の塊をつくる。
基本理念、基本政策は自公とあまり変わらない。このような塊が形成され、自公と二大勢力体制を築く。これが既得権益勢力の目論見である米国の共和、民主二大政党体制に近い。

このような二大政党体制が構築されれば、既得権益勢力による日本支配は揺るぎのないものになる。政権交代が生じてどちらの勢力が政権を担うにせよ、基本政策が変わらないからだ。
基本的な構造は 米国による支配、官僚による支配、大資本による支配 である。
業による日本支配の構造を変えないこと。これが彼らの究極の目標だ。

現時点の主要政策論争点は 憲法 原発 経済政策 である。
新党の綱領には
憲法問題について「立憲主義の深化」
原発について「原発ゼロ」
経済政策について「共生社会の構築」
が明示された。
「立憲主義の深化」とは戦争放棄、戦力の不保持、基本的人権の最高法規性という現行憲法の根幹を揺るがさないことを意味する。
憲法問題と原発政策について基本路線を共有できないからこそ、玉木氏は合流しなかった。
この点が重要である。
この基本事項を共有できない者が合流するかたちでの新党になるなら、これまでの民主党、民進党の欠陥が何も是正されないことになる。「水と油の混合物」の状態が維持されてしまう。しかし、現実には基本政策において自公と類似する主義主張を持つ者が取り除かれるかたちで新党が創設されることになる。
不純物が完全に取り除かれていない点に課題は残るが大きな前進を示したと言える。

自公政治を刷新するには自公政治と対峙する基本政策を明示する者の結集が必要不可欠だ。
新党が日本政治刷新に向けて大きな力を発揮する可能性が高まり始めている。

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立国単純合流でない点が最大成果
植草一秀の「知られざる真実」 2020年8月20日
安倍首相の体調不安が顕在化して次期衆院総選挙の早期実施が視界に入り始めた。
年内衆院総選挙シナリオは残存している。安倍首相が辞任して新内閣が発足した時点で解散総選挙が断行される可能性がある
安倍政治の是非を問う選挙になる。安倍政治の是非を問うには、安倍政治NOの勢力がひとつにまとまる必要がある。
現行選挙制度は小選挙区を軸にしている。したがって、安倍政治NOの勢力がひとつにまとまり、主権者に一対一の選択肢を明確に示すことが必要になる。

ところが、野党第一党であった旧民主党、旧民進党が安倍政治NOの民意を広く吸収する中核政党としての役割を果たしてこなかった。
安倍政治が無意味に長期化してしまった最大の原因は、安倍政治に対峙する野党勢力の連帯が実現してこなかったことにある
この問題が解消されることが、日本政治刷新に必要不可欠だ。
最大の問題は、旧民主党=旧民進党に「革新勢力」と「隠れ自公勢力」が混在してきたこと。

2009年に樹立された鳩山内閣は日本政治刷新の基本方針を明示した。明確な革新政権であった。しかし、当時の民主党内に「隠れ自公勢力」が混在しており、この「隠れ自公勢力」が鳩山内閣を内側から破壊してしまった。
菅直人内閣と野田佳彦内閣は対米隷属、財務省支配の構造に回帰してしまった。そのために、民主党そのもののイメージが完全に崩壊してしまった。

この問題を払拭できなければ、新たな革新政権の樹立は難しい。
旧民主党=旧民主党の「水と油体質」を解消すること。これが、安倍政治NOの連帯、大同団結を構築するために必要不可欠なプロセスだ。
2017年の衆院選の際に、「希望の党」への合流問題が生じたことを契機に、図らずも旧民進党の「水と油解消」への第一歩が印された。
旧民進党が立憲民主党と国民民主党に分離・分割することが実現したのである。
このまま、「革新勢力」としての立憲民主党と「隠れ自公勢力」としての国民民主党という分離・分化が進展することが望まれたが、事態は単純明快には進まなかった。
挙句の果てに立憲民主党と国民民主党が単純に再合流するとの構想が浮かび上がった。これでは元の木阿弥である

基本政策を基軸に「水と油の混合物」状態を解消することが何よりも重要だ。
その「水と油の混合物」状態を解消しての旧民主党=旧民進党再編が、曲がりなりにも進展する可能性が高まりつつある。次期衆院総選挙が近づくなかで、極めて重要な変化が生じることになる。

重要なことは「隠れ自公」を代表する玉木雄一郎氏や前原誠司氏が合流新党には加わらないこと
憲法問題、原発問題で政策の基本を共有できない者が一つの政治勢力としてまとまることは「野合」でしかない。
前原誠司氏は東京都知事選でも維新の候補者の応援に回った。
玉木雄一郎氏は保守中道を標榜しており、立ち位置が自公の側にある。
このような人々が合流新党には参加せず、独自の道を歩むのは適切なことだ。
合流新党は憲法問題について
立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行う」ことを明示している。
「立憲主義を深化させる」ことが憲法議論の基本に置かれる。
戦力の保持、集団的自衛権の行使は、立憲主義に反する行為である。この点を明確にしていることは極めて重要だ。

また、原発政策について、
原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現」することを明記したことも極めて重要だ。
憲法、原発、経済政策の三つの基軸について、基本理念、基本政策を明確にすることこそ、安倍政治NOの政治勢力の結集にとって最重要なのだ。
すぐに満点の回答は得られないが、政策を基軸に安倍政治NOの政治勢力を結集する上で、今回の国民民主党の一部勢力を排除するかたちでの立国合流は極めて大きな意義を有するものになる期待が高まっている。
(以下は有料ブログのため非公開)