2020年8月12日水曜日

12- 新型コロナQ&A 第5弾 PCR拡大で感染を広げない(しんぶん赤旗)

 日本の政府(及び分科会)は一貫してPCR検査の拡大に消極的です。そのためにはウソの数字を上げて検査の意義を否定しようとまでしています。
 現在コロナの感染が首都圏だけでなく、沖縄や名古屋、大阪など各地で一斉に再拡大中で、とっくに第1波の数字を大幅に上回ってます。それなのに政府は何もしようとしません。一体何を考えているのでしょうか。・・・・

 しんぶん赤旗の「PCR検査拡大で感染広げない(趣旨)」を紹介します。
 併せて同紙の「PCR検査偽陰性・偽陽性 政策決定の問題にならず 日医サイト NY医師の報告紹介」を紹介します。
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新型コロナQ&A 第5弾 PCR拡大で感染広げない
しんぶん赤旗 2020年8月11日
 日本共産党の志位和夫委員長が7月28日に、新型コロナウイルスの感染急拡大を抑止するため、政府におこなった「緊急申し入れ」が反響を呼んでいます。自民党議員も含めた超党派「医師国会議員の会」(6日)で賛同意見も出ました。市民的な運動にするため、なにがポイントなのか、Q&Aで考えました。

感染震源地を「面」で検査
  感染者が急増し、不安です。どうすれば抑止できますか?
  首都圏、愛知、大阪、福岡、沖縄などで連日、新規感染者数が「過去最高」を記録するなど、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大しています。このまま感染拡大を許せば、高齢者への感染が広がり、重症者が一気に広がる深刻な瀬戸際にあります。ところが、政府は、感染拡大を抑えるための実効ある方策を何一つ打ち出さず、反対に「Go To トラベル」のような感染を加速しかねない政策を強行しています。
 現在の感染拡大を抑止するには、PCR検査を大規模に実施し、陽性者を隔離・保護する取り組みを行う以外にありません。日本共産党の志位和夫委員長は7月28日、安倍晋三首相に対し、PCR検査の抜本的拡充などを求める緊急の申し入れを行いました。
 申し入れは、新型コロナの感染急拡大を抑止するため、(1)感染震源地(エピセンター)を明確にし、その地域の住民や事業所の在勤者の全体に対して、網羅的で大規模なPCR等検査を実施する(2)地域ごとの感染状況の情報を住民に開示する(3)医療機関、介護施設、福祉施設、保育園・幼稚園、学校などに勤務する職員等への定期的なPCR検査を実施する(4)検査によって明らかとなった陽性者を保護・治療する体制を緊急につくりあげる――の4点を要請しています。
 この提起は従来の検査方針の抜本的な転換を求めるものです。これまでのクラスター(感染者集団)対策は、感染が集団発生した場所からたどる、いわば「点と線」の対策でした。無症状の感染者の把握も、感染経路をたどる範囲内でしかできませんでした。
 他方で、いますぐ国民全員を対象にした検査を行うことも、人員や体制上からも不可能です。
 そうなると、無症状の感染者が多数存在する感染震源地を明確にして、住民や働く人の全体を対象に網羅的に「面」での検査を行う。これが最も合理的な方法です。
 PCR検査の抜本拡充によって、陽性者の保護・隔離を徹底的に行うとともに、地域・業種を限定した休業要請を補償とセットで行うことで、感染急拡大に歯止めをかけていくことが必要です。

感染震源地は何のこと?
  「感染震源地=エピセンター」ってなんですか?
  「感染震源地(エピセンター)」とは、新型コロナウイルスの感染者――とくに、無症状の感染者が集まるなかで、感染が持続的に集積している地域のことです。多くの専門家が、現在の感染急拡大は、全国にいくつかあるエピセンターから他の地域へ感染が広がるなかで起こっていると指摘しています。
 たとえば、東京都では、新宿区が、感染者の数も、PCR検査を受けた人が陽性と判定される割合(陽性率)も抜きんでて高くなっており、区内にエピセンターが存在することが示されています。東京の他の一連の区や、大阪市、名古屋市、福岡市などでも、エピセンターの広がりが危惧されています。
 東京都医師会の尾﨑治夫会長は、「感染を収束させるためには、感染震源地の対策が不可欠」と強調しています。(「しんぶん赤旗」日曜版8月9日・16日合併号)
 日本共産党が7月28日に行った政府申し入れの一番の要は、エピセンターを明確にし、そこに検査能力を集中的に投入して、網羅的・大規模な検査を行うことにあります。

どのように検査するか?
  「網羅的・大規模な検査」とはどのようにするのですか?
  新型コロナ感染者の一定割合は、無症状の感染者であり、そうした無症状者のなかには、他人への感染力がある人と、感染力のない人の2種類がいることが明らかとなっています。「感染力がある無症状者」をどうやって見つけだし、保護・隔離するか――これが、今、感染拡大を抑止できるかどうかのカギとなっています。
 PCR検査の対象は、当該の地域の住民、事業所の在勤者です。症状の有無や、感染者に接触したかどうかなどにかかわらず、行政から呼びかけ、その地域に住み、働いている人たち全体に検査を受けるよう促していきます。
 米国のニューヨーク州では、3~4月の感染拡大で「医療崩壊」が起こり、多くの死者が出たことを受け、州政府が検査数を大幅に増やす方針を決定。州・市当局の努力により、4月15日時点では1日当たり1万件程度だった検査能力が、6月には1日当たり5万件に引き上げられました。各所にPCR検査所やドライブスルー検査所が設置され、全市民が経済的負担なく検査を受けられる制度が整備されました。
 その結果、感染者の早期発見と感染状況の実態把握が進み、感染防護に向けたさまざまな政策も前進。新規感染者は減少し、陽性率は1%台に抑えられるようになりました。(日本医師会・COVID―19有識者会議ホームページの現地報告)
 日本でも、東京都医師会をはじめとする医療団体や専門家が、エピセンター対策のための住民全体を対象としたPCR検査実施を求め、東京都世田谷区など、感染拡大抑止のため、PCR検査体制を拡充し、幅広い住民への検査を行っていく動きが起こっています。
 厚生労働省も、8月7日に「事務連絡」を出し、「現に感染が発生した店舗等に限らず、地域の関係者を幅広く検査する」という方針を打ち出しました。
 感染拡大を抑止するための、PCR検査の抜本的拡充を求める取り組みを各地で広げていくことが重要です。

地域別の情報開示なぜ
  地域ごとの情報開示を強調していますが、なぜ必要なのですか?
  感染状況の情報開示は、あらゆる感染対策の土台となります。
 現在、感染状況の実態の開示の仕方は自治体によってバラバラです。たとえば、東京都内では、新規感染者数とともに、検査数や陽性率を何らかの形で明らかにしている自治体は15区市にとどまっています(8月7日現在)。全国をみても、20の政令市のなかで、市内の地域ごとの検査数や陽性率を、市民に開示している自治体はありません。
 これでは、住民は、どこが感染震源地なのかを知ることができず、不安にかられることになってしまいます。場合によっては、「△△△地域が危ないらしい」など、臆測による不安や疑心暗鬼が生じ、分断や差別も生まれかねません。
 行政が的確・迅速に情報を知らせてこそ、感染状況についての正しい認識を共有でき、感染者の早期保護や地域を限定した補償とセットの休業要請など、感染対策を住民の一致協力によって進めることも可能となります。また、そうした対策を打つなかで陽性率が低下するなどの効果が目に見えてくれば、住民の不安を払拭(ふっしょく)し、社会・経済活動を再開する見通しも立つようになります。
 感染状態を明らかにする情報開示こそ、地域の安心をつくる出発点です。

PCRは確立された検査
  PCR検査は、たくさんやれば間違いが多くなり「感染を広げる」「医療崩壊が起きる」との声も聞こえますが。
  世界の各国でPCR検査は毎日何万件も行われています。米国のニューヨーク市では、医療崩壊の局面から1日6万件以上のPCR検査をやって感染者を見つけ出し抑え込みに成功し、経済活動との両立をはかっています。
 PCR検査が感染対策の中心に位置付けられるのは、それがウイルス発見の最も確立された検査法=ゴールドスタンダードとされているからです。PCR抑制論は日本独特の議論です。
 微量の遺伝子を増幅させて見るPCR検査は、他の検査にない高い精度があります。唾液や鼻の奥の粘液などの検体の中にウイルスがいれば「陽性」、いなければ「陰性」と100%に近い確実さで判定できます
 いまPCR検査を広く行う目的は、無症状の感染者を見つけ出し保護・隔離するためです。つまり「診断」が目的ではなく「防疫」が目的なのです。
 無症状感染者は咳(せき)や痰(たん)も出しませんが、唾液にウイルスがいれば、会話や歌でしぶきを飛ばし感染させる可能性があります。唾液や鼻の粘液にウイルスがいるかどうかを調べることが大事で、PCR検査はそれに最も適しています
 ウイルスが唾液におらず肺の奥にいるときは、唾液の検査では出てきません。ですから、「診断」の場合は抗体検査やCT検査なども必要です。けれども唾液を見ることで、その時、感染させる可能性があるかどうかを見ることができます
 検体採取の失敗でウイルスが採れない場合や、その時ウイルスが出ていなくても時間変化でウイルスが出てくる場合があるので、定期的に検査を繰り返すことが必要です。

検査にかかる費用は
  検査にかかる費用はどうするのですか?
  今回の緊急申し入れで日本共産党が要求した検査は、感染拡大を抑えて安全・安心の社会基盤をつくるという「防疫」を目的に、国の責任で行うものです。当然、検査を受ける人に、経済的負担はかかりません。
 第2次補正予算とその予備費10兆円は、こうした施策にこそ投入が求められています。もし、財源がさらに必要ということであれば、臨時国会を召集し、今の感染急拡大をどうやって抑止するかを徹底的に議論し、必要な予算の編成を行うべきです。

陽性の人どうする
  検査で陽性となった人はどうするんですか?
  感染拡大を抑止するには、検査で陽性が明らかとなった人を、着実に隔離・保護・治療していくことが必要です。
 ところが、現在、無症状・軽症の陽性者を保護するために、ホテルなどを借り上げる宿泊療養施設は、すでに各地で不足状態となっています。
 また、中等症・重症の患者を受け入れて治療する医療機関は、病床を空けておくことによる減収、医師・看護師の特別な配置のための支出、病棟・病室の改造にかかる出費、一般医療の縮小による減収など、莫大(ばくだい)な財政負担のため、深刻な経営困難に陥っています。そのなかで、命をかけて患者を守っている医療従事者が、ボーナスカットなどの待遇悪化を強いられる事態まで起こっています。コロナ患者を受け入れていない病院・診療所も、感染を恐れた受診抑制で大幅な減収になっており、地域医療全体が「経済的医療崩壊」の危機にひんしています。
 こうした事態を、緊急に打開し、体制を立て直すことが必要です。
 国の責任で、無症状・軽症の陽性者を保護する宿泊療養施設の確保を緊急に行い、検査体制の抜本的拡充に対応できる水準まで整備を進めます。そうした整備が進むまでの間、自宅待機を余儀なくされる陽性者に生活物資を届け、体調管理を行う体制をつくります。
 新型コロナの影響で減収となっている、すべての医療機関に、国による減収補填(ほてん)を行います。医療従事者の処遇改善、危険手当の支給、心身のケアのため、思い切った財政支援を、政府の責任で行うべきです。
 さらに、検査で陽性が明らかとなった人の、居場所や体調の把握、サーベイランス(追跡)、病状が悪化した際の入院の調整などを担うのは保健所です。長年にわたり、保健所の箇所数や職員が減らされてきたこともあり、保健所の業務は現在でもパンク状態となっています。臨時職員の大幅採用や職員の研修など、保健所の人員・体制を厚くする緊急の措置をとる必要があります。それを出発点に、減らされてきた保健所の体制・職員を抜本的に増やす方向へかじを切り替えるときです。

医療・学校現場なぜ重視
  医療・介護・福祉・保育・学校などの検査を提唱していますが、なぜ重要ですか?
  この間、病院・診療所、介護施設、障害福祉施設などの集団感染が全国で発生し、感染急増をもたらす重大な要因となっています。また、これらの医療機関や施設を利用する高齢者、有病者、障害者の感染は命の危険に直結します。実際、東京都でコロナ感染によって6月末までに亡くなった325人のうち、51・7%は院内感染・施設内感染による死者だったことが、都当局の調査で判明しています。
 こうした集団感染を未然に防ぎ、重症化・死亡のリスクを回避するため、医療機関、介護施設、福祉施設、保育園・幼稚園、学校などに勤務する職員と、出入り業者を含む関係者全員に定期的な検査を行うというのが、日本共産党の提案です。これらの施設の利用者についても、必要に応じて、全体を対象にした検査を行います。
 この間、職員や利用者の感染が見つかった病院・介護施設で、経営者が判断し、職員・関係者・利用者全員のPCR検査を行ったことで、二次被害を防ぎ、事態を早期に収束させた事例も各地で生まれています。
 命を守るケアの現場と、そこで働く人たちを感染から守るため、PCR検査体制を抜本的に拡充し、定期的な検査を行っていくことが求められます。


PCR検査偽陰性・偽陽性 政策決定の問題にならず
日医サイト NY医師の報告紹介
しんぶん赤旗 2020年8月11日
 日本医師会の有識者会議は5日付で緊急レポート「ニューヨーク州におけるPCR検査の実際」をWEBサイトに掲載しています。執筆者はニューヨーク市内のコロンビア大学病院で第一線で診療にあたってきた島田悠一医師で、ニューヨーク州でPCR検査数を増やし感染状況を正確に把握したことで科学的な政策決定が可能となったとし、政策決定に用いる場合は偽陰性・偽陽性は問題にならないとしています。
 レポートでは、検査が急速に増加した要因として、病院、診療所のほか薬局でも検査を受けることができ、市が設置したPCR検査所、ドライブスルー検査所は700カ所にのぼるといいます。また州や市が設置した検査所では検査は無料など、患者の経済的負担をなくしたことがあげられています。
 レポートで島田氏は「PCR検査に関しては大きく分けて二つの目的・利用法がある」とし、「検査結果を個人の治療方針の決定に利用する場合」と「多くの検査結果を集計して集団としての(つまり、市、州、国単位での)行動方針や政策の決定に利用する場合」をあげています。そのうえで「事前確率や偽陽性・偽陰性が問題になる可能性があるのは前者の場合、つまりPCR検査を個々の症例の方針決定に利用する場合であって、市や州などが集団全体の現状と傾向を把握するために多くのPCR検査を行ってその集計結果を利用する後者の場合とは目的が異なる」としています。
 同氏は「ニューヨーク州が取っている戦略は後者」だとし、できるだけ多くの検査を行うことで「集団全体での感染者数の割合やその増減の傾向を非常に高い精度で把握し、それによって導き出される指標(例:実効再生産数)に基づいて政策を決定(そして場合によっては調整・変更)する」としています。