2020年8月29日土曜日

突然の安倍退陣 負のレガシー払拭の課題は今後も続く(澤藤統一郎氏) ほか

 28日、安倍首相はその直前まで続投を思わせる雰囲気もあって「まだ居続けるのか」と気をもませましたが、ついに辞意を表明しました。これで史上最悪と言われた反動政治と数々の違法な所業に、一先ず終止符が打たれたのは喜ばしいことでした。

 ところで「平家物語」は平家と源氏の抗争時代における平家の隆盛と滅亡のさまを記したものですが、冒頭の部分で、平家のトップであった平清盛を英雄視するどころか、その悪虐非道ぶりを「想像を絶するもので、語るべき言葉もない」と悪しざまに述べています。

 弁護士の澤藤統一郎氏がブログに、安倍首相の暴政をその平清盛になぞらえた文章を載せました。
 まことに安倍首相がこれまで行ってきた暴政と悪行を思うと怒りしか湧きませんが、それらをユーモアで包みながら明らかにしたあたりが澤藤氏の力量です。
 そして「この政権が存続していた間に、日本の経済力も、国際的なプレステージ名声も、科学的な競争力も軒並み下がってしまった」と、まさに「地球を俯瞰」する観点からの批判も加えています。

 文中の青字・赤字強調部分及び太字強調部分はずべて原文に拠っています。

 併せてジャーナリスト・志葉玲氏の「志葉玲タイムス」を紹介します。
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突然の安倍退陣 ー 負のレガシー払拭の課題は今後も続く
澤藤統一郎の憲法日記 2020年8月28日
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し。猛き人もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
 遠く異朝を訪ひ近く本朝を窺ふに、猛き者も奢れる者もとりどりにこそあれ、諫めをも思ひ入れず天下の乱れん事を悟らずして民間の嘆く所を知らざりしかば、久しからずして亡じにし者少なからず。間近くは、安倍晋三内閣総理大臣と申しける人の有様、憲法の定めにも従わず、政権を私物化し、嘘とごまかしで固め、数々の不祥事を重ねて、コロナ禍の裡に民の憂ふる所を知らざりしかば、何の誇り得る業績もないままに、再度にわたる政権投げ出しに至りしとぞ伝へ承るこそ心も詞も及ばれね。
本日(8月28日)午後2時頃、ネットのニュース速報で、「安倍晋三辞意表明」を知った。さしたる感慨はない。間もなく3時前ころに、東京新聞の記者から電話がかかってきた。「安倍辞任の感想を聞きたい」と言うこと。まとまりなく、次のようなことを、話した…はずである。
長すぎた政権でした。そして、国民にとっては迷惑な政権国政を私物化し、嘘とごまかしと忖度の、負のレガシーで固められた政権この政権の終焉はもちろん歓迎しますが、本来は選挙による国民の審判でこの政権に国民からの縁切り状を突きつけるべきところ。それがきちんとできなかったことが残念と言わざるを得ません。
しかし、彼が必死の執念を燃やした憲法改正は、国民の改憲阻止の世論と運動が阻止し得たこのことは、まことに喜ばしいと思います。おそらくは、「安倍のいるうちが、千載一遇の改憲のチャンス」。改憲派はそう思っていたはずです。その与望を担った安倍政権が改憲の糸口にも至らずに崩壊したことの意味は大きいここしばらくは、改憲の見通しは立たないでしょう。
それにしても、不祥事続きの腐敗政権でした。モリ・カケ・サクラ、カジノに河井。忖度文化の醸成、公文書管理の意識的放棄。説明責任の放棄と食言の数々は、長すぎた政権の腐敗の典型でもあり、安倍晋三自身の品性の問題でもあったと思います。
あらためて、この政権には何の業績もレガシーもないことに愕然とします。この政権が存続していた間に、日本の経済力も、国際的なプレステージも、科学的な競争力も軒並み下がってしまった。北方領土問題を解決して日露間の関係改善を実現することも、拉致問題を解決して北東アジアに平和な国際関係を築くこともできなかった。ウソをついてまでして東京五輪を招致したけれどコロナによって開催の実現を阻まれた。
また、何としても歴史的な汚点は、集団的自衛権行使容認の戦争法(安保法制)を強行成立させたこと。その法律の廃止を含めて、数々の負のレガシーを払拭する努力をこれからも続けていかなくてはなりません。誰が、後継首相となっても。


祝!安倍首相辞任 アベ政治を完全に終わらすことが必要
 志葉玲タイムス 2020-08-28
 安倍晋三首相が今日、辞任すると発表したことは、祝うべきことだ。戦後の日本で、安倍政権ほど、政治・社会をメチャクチャにした政権はないだろう。日本の憲政史上、最悪最低の7年8ヶ月であった。本来であれば、数々のスキャンダルから安倍首相はもっと早くに辞任していたはずだった。
 もし、自民党の政治家達がもっと勇気があり、かつマトモであったならば。
 もし、日本の大手マスコミが圧力に屈したり、自主規制したりしなければ。
 もし、もっと多くの有権者が政治についてもっと注意深く観察し、選挙の際に投票していたならば。

 そう、安倍首相が辞任すること自体は、喜ばしいことであるが、安倍首相の「負のレガシー」が日本の政治に残るようなことがあってはいけない。安倍政権の終わりと共に、いわゆる"アベ政治”的なものも、日本の政治から払拭しないといけないのである。
 つまり、

・平気で嘘をつく
・一部の利害関係者以外の全ての人々を軽んじる姿勢
・憲法や法律を勝手な解釈で歪める
・国会軽視
・報道機関への圧力
・公文書を改ざん、処分
・人事で官僚を支配し全て自分の都合良く使う
・佐川元理財局長等、政権に媚び悪事を働いた輩の不処罰
・公的資金を自分の都合で使う(日銀等による株価操作など)
・徹底的な対米追従、沖縄敵視
・オリンピックに乗じた難民や外国人の排斥
・石炭中毒、原発中毒
・軍事費使いまくり
・歴史修正主義
・経団連の完コピ政策
・日本会議完コピ政策
・消費税増税等、デタラメで戦略性のない経済政策
・災害やコロナ等、危機的な状況時に働かない
・その他やるやる詐欺

 などであろう(他にもいろいろあるが、とりあえず思いついたものを列挙した)。
 大手マスコミ報道は、早くも「ポスト安倍」に焦点を移そうとしているが、上述したように、とりわけ大手マスコミの「忖度報道」は安倍政権の「憲政史上最長」まで生きながらえさせた共犯者である。またポスト安倍とされる政治家もそのほとんどが安倍政権を支えてきた責任がある。誰が後任になるにせよ、”アベ政治”的なものが、日本の政治から完全に払拭されないといけないし、今度こそ、報道関係者は「権力を監視する」という役割を果たすべきなのだ