広島は6日、75回目の原爆忌を迎えます。
午前8時から市主催の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が開かれ、犠牲者に祈りをささげました。
今年は新型コロナ禍のため、式典参列者席を当初の1万1500席から約800席に大幅に縮小しました。
松井一実市長は平和宣言で、日本政府に対し核兵器禁止条約への署名と批准を求める被爆者の思いを誠実に受け止めて条約に参加するよう求めました。
また、新型コロナウイルスについて、市民社会が連帯して立ち向かうことを促すなど、「連帯」ということばを使って核兵器廃絶や世界の恒久平和の実現などを求めました。
NHKの早朝のニュースを紹介します。
+ 併せて広島市長による広島平和宣言を紹介します。
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原爆投下から75年 きょう広島で「原爆の日」追悼の祈りに
NHK NEWS WEB 2020年8月6日
広島は、原爆が投下されて75年となる「原爆の日」を迎えました。新型コロナウイルスの影響で、例年どおりの追悼が難しい状況となるなか、被爆地・広島の街は、6日(きょう)一日、犠牲者を追悼する祈りに包まれるとともに、核兵器のない世界の実現に向けた訴えを、国内外に発信することにしています。
原爆が投下されて75年の節目となる6日、広島市では午前8時から平和記念式典が開かれ、被爆者や遺族の代表をはじめ、安倍総理大臣のほか、およそ80の国の代表などが参列します。
ただ、ことしの式典は、新型コロナウイルスの感染を防ぐため会場の平和公園への入場が規制され、一般の参列者席をなくすため、参列者は例年の1割に満たないおよそ800人の見通しです。
式典ではこの1年に亡くなった人や新たに死亡が確認された人、合わせて4943人の名前が書き加えられた32万4129人の原爆死没者名簿が原爆慰霊碑に納められます。
そして原爆が投下された午前8時15分に参列者全員で黙とうをささげます。
世界の核軍縮をめぐっては、核保有国が核兵器の近代化を進め、非核保有国との対立が深まるなど、核兵器廃絶に向けた動向が不透明となるなか、3年前、国連で採択された核兵器禁止条約は、現在の批准国が40か国で、発効に必要な50か国に達していません。
広島市の松井一実市長は6日の平和宣言のなかで、日本政府に対し核兵器禁止条約への署名と批准を求める被爆者の思いを誠実に受け止めて条約に参加するよう求めることにしています。
また、新型コロナウイルスについても触れ、市民社会が連帯して立ち向かうことを促すなど、「連帯」ということばを使って核兵器廃絶や世界の恒久平和の実現などを求めることにしています。
被爆者の平均年齢はことし、83歳を超え、被爆者団体の解散が相次いでいて、原爆の悲惨さをどう語り継いでいくのかが課題となっています。
一方、ことし、NHKが行ったアンケート調査では、アメリカの若い世代のおよそ7割が「核兵器は必要ない」と答え、被爆者から今後の認識の変化に期待する声も出ています。
被爆地・広島は、6日一日、犠牲者を追悼する祈りに包まれるとともに、「核抑止力による平和」ではなく「核兵器のない平和な世界」の実現を願う被爆者の声に向き合い、その訴えを国内外に発信することにしています。
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2020 広島平和宣言
1945年8月6日、広島は一発の原子爆弾により破壊し尽くされ、「75年間は草木も生えぬ」と言われました。しかし広島は今、復興を遂げて、世界中から多くの人々が訪れる平和を象徴する都市になっています。
今、私たちは、新型コロナウイルスという人類に対する新たな脅威に立ち向かい、踠(もが)いていますが、この脅威は、悲惨な過去の経験を反面教師にすることで乗り越えられるのではないでしょうか。
およそ100年前に流行したスペイン風邪は、第一次世界大戦中で敵対する国家間での「連帯」が叶わなかったため、数千万人の犠牲者を出し、世界中を恐怖に陥れました。その後、国家主義の台頭もあって、第二次世界大戦へと突入し、原爆投下へと繫がりました。
こうした過去の苦い経験を決して繰り返してはなりません。そのために、私たち市民社会は、自国第一主義に拠ることなく、「連帯」して脅威に立ち向かわなければなりません。
原爆投下の翌日、「橋の上にはズラリと負傷した人や既に息の絶えている多くの被災者が横たわっていた。大半が火傷で、皮膚が垂れ下がっていた。『水をくれ、水をくれ』と多くの人が水を求めていた」という惨状を体験し、「自分のこと、あるいは自国のことばかり考えるから争いになるのです」という当時13歳であった男性の訴え。
昨年11月、被爆地を訪れ、「思い出し、ともに歩み、守る。この三つは倫理的命令です」と発信されたローマ教皇の力強いメッセージ。そして、国連難民高等弁務官として、難民対策に情熱を注がれた緒方貞子氏の「大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分のだけの平和はありえない。世界はつながっているのだから」という実体験からの言葉。これらの言葉は、人類の脅威に対しては、悲惨な過去を繰り返さないように「連帯」して立ち向かうべきであることを示唆しています。
今の広島があるのは、私たちの先人が互いを思いやり、「連帯」して苦難に立ち向かった成果です。実際、平和記念資料館を訪れた海外の方々から「自分たちのこととして悲劇について学んだ」、「人類の未来のための教訓だ」という声も寄せられる中、これからの広島は、世界中の人々が核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて「連帯」することを市民社会の総意にしていく責務があると考えます。
ところで、国連に目を向けてみると、50年前に制定されたNPT(核兵器不拡散条約)と、3年前に成立した核兵器禁止条約は、ともに核兵器廃絶に不可欠な条約であり、次世代に確実に「継続」すべき枠組みであるにもかかわらず、その動向が不透明となっています。世界の指導者は、今こそ、この枠組みを有効に機能させるための決意を固めるべきではないでしょうか。
そのために広島を訪れ、被爆の実相を深く理解されることを強く求めます。その上で、NPT再検討会議において、NPTで定められた核軍縮を誠実に交渉する義務を踏まえつつ、建設的対話を「継続」し、核兵器に頼らない安全保障体制の構築に向け、全力を尽くしていただきたい。
日本政府には、核保有国と非核保有国の橋渡し役をしっかりと果たすためにも、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いを誠実に受け止めて同条約の締約国になり、唯一の戦争被爆国として、世界中の人々が被爆地ヒロシマの心に共感し「連帯」するよう訴えていただきたい。また、平均年齢が83歳を超えた被爆者を始め、心身に悪影響を及ぼす放射線により生活面で様々な苦しみを抱える多くの人々の苦悩に寄り添い、その支援策を充実するとともに、「黒い雨降雨地域」の拡大に向けた政治判断を、改めて強く求めます。
本日、被爆75周年の平和記念式典に当たり、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げるとともに、核兵器廃絶とその先にある世界恒久平和の実現に向け、被爆地長崎、そして思いを同じくする世界の人々と共に力を尽くすことを誓います。
令和2年(2020年)8月6日
広島市長 松井一実