2020年8月16日日曜日

英 無症状者検査で感染抑制 経済再開でも陽性率低下

 英国は当初スウェーデンと同様に集団免疫獲得戦略を採り、多数の感染者・死者を出しましたが、その後は止め、検査対象を広げ集団感染が発生した場所では積極的に検査し、無症状の感染者を見つけています。
 その結果、6月1日時点の1日当たりの検査約7万7千件で新規感染者は約1500人陽性率は2%でしたが、7月末時点で検査約12万8千件に増やした結果、感染者は約500人に減少、陽性率は04%まで下がりました。
 検査数を増やした結果陽性率が下がるのは正常なあり方で、いまでは経済活動の再開の幅を広げています

 それに対して日本の検査数は相変わらず微々たるもので、6月1日時点で検査が約3千件で感染者は約40人、陽性率は14%に対して、7月時点で検査は5倍の1万5千件超、感染者は約25倍の約1千人、陽性率は66%となりそのまま高止まりしています

 政府は死者の数が少ないから問題はないという態度ですが、その死者の数は7月が37人に対して8月は半月で81人(ひと月に換算すれば162人以上)で、約44倍以上に増加しています。このままでは感染者は増加を続け、死者は急増していきます。
 そういう状況であれば、人々は感染しないように行動を自粛するので、決して政府が望むように経済はを回りません。

 一刻も早くコロナ対策先進国に学び、PCR検査(乃至は抗原検査)を拡充して感染拡大を防止するという正攻法に修正すべきです。
 日経新聞の記事を紹介します。
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無症状者検査で感染抑制 英、経済再開でも陽性率低下
日経新聞 2020/8/14
世界各国の新型コロナウイルスの感染状況などの比較で、無症状者への検査の増加が封じ込めのカギを握る実態が見えてきた。英国は検査対象を広げ無症状からの感染拡大を抑制した。検査や感染防止が不徹底な日本や米国は感染拡大が続く。都市封鎖などに加え、検査対象の拡大が明暗を分ける要因になっている。

英大学の研究者らのデータベースから1日あたり検査数(7日間の移動平均)が1千件以上で、7月末の時点で2カ月前より検査数が増えた54カ国を比較した。感染拡大の目安となる陽性率でみると、英国やカナダ、フランスなど20カ国で低下、日本や米国など34カ国で上昇していた。
英国では6月1日時点の検査は約7万7千件で感染者は約1500人となり、陽性率は2%だった。7月末時点で検査は約12万8千件に増えたが感染者は約500人に減少、陽性率は0.4%まで下がった
英国は地域限定の都市封鎖(ロックダウン)を継続するとともに、増強した検査能力で対象者を拡大した。集団感染が発生した場所では積極的に検査し、無症状の感染者を見つけている
さらに介護施設職員は毎週検査を受け、タクシー運転手など感染リスクが高い人を対象に検査を実施している。感染者が欧州で最多の時期もあったが、経済活動の再開を広げている
カナダも米国との国境封鎖や部分的な緊急事態宣言を継続して感染拡大を抑え込んでいる。
英キングス・カレッジ・ロンドン大(国際保健)の渋谷健司教授は「感染者数が減ったときこそ、経済活動の再開に向け、検査の網を広げて早期に再燃を抑え込む対策が必要」と指摘する。

一方、米国は6月1日時点の検査数約50万件に対し新規感染者は2万人余りで、陽性率は約4%だった。7月末には検査は80万件超、感染者は3倍を超える約6万6千人に達し、陽性率は約8%と倍増した。
ニューヨーク市は「トレーサー」と呼ぶ担当者3000人を雇い、濃厚接触者を探し出して感染を封じ込めたが、フロリダ州やテキサス州などでは感染拡大が続き、陽性率も上昇している地域がある。
検査の増加が感染抑制につながっていない状況はスペイン、インド、南アフリカでもみられた。

日本も同様だ。厚生労働省によると、6月1日時点で検査が約3千件で感染者は約40人、陽性率は1.4%。7月31日時点で検査は5倍の1万5千件超、感染者は約25倍の約1千人となり、陽性率は6.6%となった。
6月1日時点の陽性率を維持できていれば感染者は約220人だった計算になる。政府や東京都は7月の感染者数の増加について「検査数が増えたことが一因」と説明したが、感染自体が広がっていることは明らかだ。
日本は緊急事態宣言で感染者が減り、検査能力は増えたものの、英国のように検査対象を拡大しなかった。潜在化するウイルスを早期に見つけてクラスター(感染者集団)発生を防ぐには、検査対象拡大が必要となる。
厚労省によると、PCR検査能力は拡充され、全国的にはピーク時でも対応できるという。だが不足している県もある。
愛知県は厚労省の調査に1日最大約1800人の検体を採取、分析できると回答。ところが陽性率は7月中旬から急上昇し、2日までの1週間では18.5%で全国で最も高い。大阪府も11.1%で政府の分科会が掲げた指標の10%を超えた。同省の専門家組織は「検査が追いついていない可能性がある」と指摘する。

感染が拡大した沖縄県は7日、濃厚接触者のPCR検査は症状が出ている人に限定することを発表。無症状でも濃厚接触者全員を検査していたが「検査結果の迅速な報告が困難になったため」(同県)という。
英国でも感染が緩やかだが再拡大するなどウイルスの抑制は容易ではない。ただ、経済・社会活動を継続しながら感染者を減らすためには、感染防止策の徹底と無症状でも感染リスクが高い人に検査する態勢がカギとなる。日本は3~5月の教訓を十分に生かせていない。
(社会保障エディター 前村聡)