佐藤栄作元首相の首相在任記録をこの24日に塗り替える安倍首相を祝うパーティー(二階幹事長主催)を与党は27日に予定していましたが、諸般の事情で延期になったということです。
コロナ禍で「100年に1度の国難」にもかかわらず、安倍首相は国会も開かず殆ど国民の前に姿を見せないというのに、その一方で首相在任記録が歴代トップになったからといってそのパーティーの主役になることなど、国民は許さないでしょう。
高野 孟氏の「永田町の裏を読む」・・「踏んだり蹴ったりになりそうな『首相最長不倒達成記念日』」を紹介します。
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永田町の裏を読む
踏んだり蹴ったりになりそうな「首相最長不倒達成記念日」
高野 孟 日刊ゲンダイ 2020/08/20
周知のように、安倍晋三首相の連続在任日数が来週月曜日(24日)に2799日に達し、大叔父の佐藤栄作を超えて明治以来歴代トップとなる。が、それを祝おうという声は自民党内からも取り巻き、側近たちからも上がってこない。
もちろん、コロナ禍がますます深刻化するさなかに、そんなことをやるわけにはいかないという事情はあるけれども、それにしても、国会も会見も番組も避けて逃げ回っているような体たらくで、この記念すべき日を迎えて一体どういう心境なのか、ぜひ聞いてみたい気がする。
とはいえ、ご本人はたぶん、「長けりゃいいってもんじゃないよ」と言われてしまうのが分かっているので何も語りたがらないだろうから、成り代わって約2800日間、第1次政権の分まで合算すれば3000日間を大きく超えるこの政権の業績を改めて振り返ると、あまりにも中身が乏しいことに愕然とする。
安倍といえば看板は「改憲」だが、96条先行改憲、閣議決定による解釈改憲、9条第3項追加など、あれこれメニューを持ち出した揚げ句、今はもう可能性ゼロに落ち着いてしまった。最大の売り物のはずだった「アベノミクス」も、膝元の内閣府が「18年10月で終わって、以後は景気下降局面に突入した」と認めてしまったので、安倍自身がその言葉を封印せざるを得なくなった。
外交好きは有名で外遊の回数は誰よりも多いけれども、肝心の「拉致」「北方領土」は鳴り物入りではやし立てただけで、成果がないどころかむしろ後退。韓国や中国など近隣との関係改善もままならない。
「福島原発事故はアンダーコントロール」と、一世一代の嘘までついて誘致した東京オリ・パラは、来年夏に延期しても開催できるかどうか分からず、そうこうするうちに、米国の海洋化学研究者でウッズホール海洋研究所のケン・ビュッセラー上席研究員が、権威ある科学雑誌「サイエンス」8月7日号に、トリチウムを十分除去できないままの汚染水を海に流すことの危険性を指摘した提言を発表するなど、福島原発の「アウト・オブ・コントロール」ぶりに国際的な注目が集まり始めている。
安倍にとって踏んだり蹴ったりの首相最長不倒記録達成記念日となりそうである。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。